ここが変だよ日本の不動産取引
【第7回】 2018年6月11日公開(2018年7月14日更新)
バックナンバー 著者・コラム紹介
風戸裕樹

不動産売買はネット取引できない不便な日本
外人投資家の呼び込みへ、“規制”見直しを

不動産のネット取引は一部解禁されたものの、不動産売買については未だ認められていない日本。不動産市場は、相変わらず不透明で閉鎖的です。ネット取引が可能になれば、不動産を購入する外国人投資家が増加するなどのメリットがあるはずですが、認められる日はまだ遠そうです。

海外では、不動産の個人間取引サイトが登場

 日本でもスマホアプリのメルカリが登場してネット上で売り手と買い手が直接取引するサービスが人気を集めるようになりました。インターネットを利用すれば、個人でも簡単に買い手を探せるようになったからです。

 マンションや戸建てといった不動産も、これまでは買い主を探すのが大変だったので、不動産仲介会社と媒介契約を結んで代わりに探してもらってきたわけですが、ネットを活用すれば個人同士が直接取引する「ピアツーピア(P2P)取引」は可能ではないでしょうか。

 ところが、家を買うのも借りるのも日本ではネットだけではできません。家が高額でかつトラブルが発生しやすいことを理由に、ネット取引には慎重です。

 海外では不動産のネット取引は以前から活発に行われており、最近では個人が保有する物件を掲載して直接売買できるP2Pの不動産取引サイトも登場しています。シンガポールでは「Averspace」といったP2Pサイトがあり、個人が保有する物件を掲載して直接、買い主を探すことができます。

 なぜ日本では不動産のネット取引が解禁されないのでしょうか。

安心してP2P取引ができる環境整備が必要

 日本でも、従来から個人が保有する家を親戚や知人などに直接譲渡する場合には、仲介会社に依頼せずに直接取引することは行われてきました。こうした相対取引は、法的に何ら問題はありません。

 相対取引なら買い主も売り主も、仲介会社に仲介手数料を支払う必要がなくなります。売り主が個人の場合には、建物部分にかかる消費税や仲介手数料の消費税も納付する必要がないので、個人間取引はお得と言えます。

 もちろん仲介会社は、正しい物件情報を提供し、取引のトラブルを防止する役割を担っています。しかし、安心してP2P取引ができる環境を整備すれば、もっと不動産取引を効率化できるようになるでしょう。

日本は重説を「対面」で説明する義務あり

 日本で不動産のネット取引が実現していないのは、宅地建物取引業法で定めた法規制に理由があります。対象物件に関する重要な情報を記載した「重要事項説明書(重説)」を宅地建物取引業者は必ず作成し、売買契約を結ぶ前に買い主に「対面」で説明することが法律で義務付けられているからです。

 また、売買契約書も書面での交付が義務付けられており、電子契約したあとに改めて書面を郵送しなければなりません。その手間を考えれば、重要事項説明書で対面した時に合わせて、書面で契約する方が楽というのも確かです。

 政府は2013年に対面での販売が義務付けられてきた医薬品と合わせて、不動産のネット取引解禁に向けて検討する方針を打ち出しました。医薬品の方は処方薬を除く一般医薬品のネット販売が14年に解禁されました。

 一方で、不動産分野では賃貸契約の重要事項説明書をネットで行う「IT重要事項説明書」が17年10月にようやく本格導入されたばかり。売買契約でのIT重要事項説明書は、社会実験を行っていた法人間取引ですら見送られてしまい、個人取引では検討さえ行われていません。

 政府は、行政手続きや経済活動のIT化を促進するため、契約書や印鑑などを電子化する「デジタルファースト一括法案(仮称)」の検討を進めており、早ければ18年秋の臨時国会の提出する予定です。不動産取引の契約書面の電子化も検討対象になるでしょうが、実現するかどうかは不透明です。

【関連記事はこちら!】
>> 「買い主」が不動産仲介手数料を払うのは日本だけ! その上、売り主のために作った重要事項説明書を、買い主にも使いまわす不届きな不動産会社が多い!

海外は、不動産のEDI標準を策定

 では、海外で不動産のネット取引(電子商取引、いわゆるEDI)が活発に行われるようになったのはなぜでしょうか。

 EDIを行うためには、情報をやり取りするために標準データコード体系や標準規約を定める必要があり、海外では米国を中心に1990年代に不動産取引のためのEDI標準が策定され、国際標準化が進められてきました。日本でも経済産業省が中心となって様々なEDI標準を定めていますが、不動産分野のEDI標準はいまだに策定されていません。

日本は、そもそも情報が非開示

 そもそも海外では、不動産に関する情報やデータがオープンになっているので、日本のように契約直前になって買い主だけに情報を公開する「重要事項説明書」のような制度がありません。シンガポールでは不動産取引価格のデータが一般に公開されているので、販売価格が高いか安いかを買い主が判断できる環境が整っています。

 Averspaceには、物件に関する情報をまとめた「コンディションレポート」や、賃貸で運用した場合の収益性などのデータを一覧できる「ダッシュボード」などを掲載しています。ネット取引しやすいように様々な情報が物件ごとに公開されているのです。

 シンガポールでは、外国からの不動産投資が活発で、外国人投資家がわざわざシンガポールまで出向かなくて済むネット取引のニーズが強いという事情もあります。積極的に外国からの不動産投資を呼び込むために、ネット取引しやすい環境を整えてきたのです。

 なお、シンガポールのP2Pサイトを見ると、大手デベロッパーなどが開発した新築のコンドミニアム(分譲マンション)を売り主として直接取引するのに利用しています。売り主・買い主ともにプロで、公開情報に基づいてネット取引できるスキルのある人が利用しているようです。

「不動産取引はトラブルが発生しやすいので、ネット取引はご法度」というのが日本の考え方ですが、一方でプロ同士であれば、その心配は無用です。導入が見送られている「法人間取引におけるIT重要事項説明書」くらいは早く認めた方がいいのではないでしょうか。

【関連記事はこちら!】
>> 不動産の売却価格(成約価格)が見られないため、日本ではどんな不都合なことが起こっているのか?

外人投資家にも対面で説明を受ける義務

 日本でも数年前から外国人の個人投資家が東京湾岸地域に建設された超高層タワーマンションを購入するケースが増えています。日本では新築物件でも売り主が不動産会社なので対面での重要事項説明書が義務付けらており、外国人投資家は日本に来て売買契約しなければなりません。ネット取引が可能になれば、日本でも不動産を購入する外国人投資家がさらに増えると思うのですが…。

 日本で不動産のネット取引がいまだに解禁されていないのは、不動産市場が相変わらず不透明で閉鎖的である証拠なのでしょう。

(編集協力=ジャーナリスト・千葉利宏)

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<不動産売却の基礎編>
相場を知るために、まずは「一括査定」を活用!

 不動産の売却に先駆けて、まずは相場を知っておきたいという人は多いが、それには多数の不動産会社に査定をしてもらうのがいい。

 そのために便利なのが「不動産一括査定サイト」だ。一括査定サイトで売却する予定の不動産情報と個人情報を入力すれば、最大6社程度から査定してもらうことができる。不動産の相場観が分かるだけでなく、きちんと売却してくれるパートナーである不動産会社を見つけられる可能性が高まるだろう。

 ただし、査定価格が高いからという理由だけでその不動産会社を信用しないほうがいい。契約を取りたいがために、無理な高値を提示する不動産会社が増加している。

 「大手に頼んでおけば安心」という人も多いが、不動産業界は大手企業であっても、売り手を無視した手数料稼ぎ(これを囲い込みという)に走りがちな企業がある。

 なので、一括査定で複数の不動産会社と接触したら、査定価格ばかりを見るのではなく、「売り手の話を聞いてくれて誠実な対応をしているか」、「価格の根拠をきちんと話せるか」、「売却に向けたシナリオを話せるか」といったポイントをチェックするのがいいだろう。

 以下が主な「不動産一括査定サイト」なので上手に活用しよう。

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■相場を知るのに、おすすめの「不動産一括査定サイト」はこちら!
◆HOME4U(不動産一括査定サイト)
対応物件の種類 マンション、戸建て、土地、ビル、アパート、店舗・事務所
掲載する不動産会社数 900社 不動産一括査定サイト「HOME4U」の公式サイトはこちら
サービス開始 2001年
運営会社 NTTデータ・スマートソーシング(東証一部子会社)
紹介会社数 最大6社
【ポイント】 強みは、日本初の一括査定サービスであり、運営会社はNTTデータグループで安心感がある点。弱点は、提携会社数がやや少なめであること。
HOME4U公式サイトはこちら
◆イエウール(不動産一括査定サイト)
対応物件の種類 マンション、戸建て、土地、投資用物件、ビル、店舗、工場、倉庫、農地
掲載する不動産会社数 1400社以上 不動産一括査定サイト「イエウール」の公式サイトはこちら
サービス開始 2014年
運営会社 Speee
紹介会社数 最大6社
【ポイント】 強みは、掲載する会社数が多く、掲載企業の一覧も掲載しており、各社のアピールポイントなども見られる点弱点は、サービスを開始してまだ日が浅い点。
不動産一括査定サイト「イエウール」の公式サイトはこちら
◆LIFULL HOME'S(不動産一括査定サイト)
対応物件の種類 マンション、戸建て、土地、倉庫・工場、投資用物件
掲載する不動産会社数 1692社(2018年8月)
サービス開始 2008年
運営会社 LIFULL(東証一部)
紹介会社数 最大6社
【ポイント】強みは、匿名査定も可能で安心であるほか、日本最大級の不動産ポータルサイト「LIFULL HOME'S」が運営している点弱点は大手の不動産仲介会社が多くはないこと。
不動産一括査定サイト「LIFULL HOME'S」の公式サイトはこちら
◆スマイスター(不動産一括査定サイト)
対応物件の種類 マンション、戸建て、土地、投資用物件、ビル、店舗、工場、倉庫
掲載する不動産会社数 1400社 不動産一括査定サイト「スマイスター」の公式サイトはこちら
サービス開始 2006年
運営会社 リビン・テクノロジーズ
紹介会社数 最大6社
【ポイント】強みは、掲載している不動産仲介会社数が多く、マンション、戸建て、土地以外の工場、倉庫、農地も取り扱いがある点。弱点は、運営会社が広告代理店で上場していないこと。
スマイスター公式サイトはこちら
◆イエイ(不動産一括査定サイト)
対応物件の種類 マンション、戸建て、土地、投資用物件、ビル、店舗、工場、倉庫、農地
掲載する不動産会社数 1000社 不動産一括査定サイト「イエイ」の公式サイトはこちら
サービス開始 2007年
運営会社 セカイエ
紹介会社数 最大6社
【ポイント】 強みは、サービス開始から10年以上という実績があるほか、対象となる不動産の種類も多い。「お断り代行」という他社にないサービスもある。弱点は、経営母体の規模が小さいこと。
不動産一括査定サイト「イエイ」の公式サイトはこちら
◆マンションナビ(不動産一括査定サイト)
対応物件の種類 マンション
掲載する不動産会社数 900社超、2500店舗 不動産一括査定サイト「マンションナビ」の公式サイトはこちら
サービス開始 2011年
運営会社 マンションリサーチ
紹介会社数 最大9社(売却6社、賃貸3社)
【ポイント】 強みは、マンションに特化しており、マンション売却査定は6社まで、賃貸に出す場合の査定3社まで対応している点。弱点は、比較的サービス開始から日が浅く、取扱い物件がマンションしかない点。
マンションナビ公式サイトはこちら
Special topics pr


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