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弁護士・永沢徹 企業乱世を読み解く

MBOは企業にとって良いことか?

永沢 徹 [弁護士]
【第11回】 2007年12月26日
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 焼肉チェーン店「牛角」やコンビニチェーン「ampm」、食品スーパー「成城石井」を経営するレックス・ホールディングスが行なったMBO(経営陣買収)に応じなかった株主たちが、公正な買取価格を決定するよう申し立てていた問題で、19日、東京地裁は株主側の請求を棄却した。

 2006年11月10日に発表されたTOB価格は1株23万円で、TOB前1ヵ月平均価格を基準としていた。だが、同社はTOB発表3ヵ月前の8月21日に業績の下方修正を発表し、株価が急落(同日終値304,000円)。株主たちは「意図的かつ不当に低い価格」と主張していた。

 前回取り上げたカネボウの件と異なり、今回のケースでは株主側は鑑定を求めなかった。というのも、カネボウの案件で鑑定に5000万円かかったということが影響している。今回はカネボウの時ほど株が集まっていないので、多額の鑑定費用を支出してしまうと買い取り価格が多少上がっても損失が出かねないという株主側の判断があったようだ。

 鑑定がなければ、裁判所としては根拠なく買取価格を変更できない。株主側は「50万円を下回るべきではない」と主張し、一方のレックス側は7万5000円を主張していたが、裁判所は「なんらの鑑定も実施されていない本件では、裁判所が強制的取得により失われる期待権の具体的金額を専門的知見を反映した具体的金額を算出することはできない」として、TOB価格23万円が不当であった根拠はないと、株主の請求を退けた。

 ただし、裁判所は株主側の主張にも配慮してか「株主利益を考慮した公正な手続きの観点から、本件におけるMBOの必要性に関する株主に対する説明や、価格の適正性を担保する手続きについて批判の余地がないとする趣旨ではないことはいうまでもない。これまで積み重ねられてきた議論を基にして、今後、MBOに関する公正なルールが確立されることが望まれるところである」と付け加えている。

MBOのほとんどは
ファンド・バイアウト

 一般にMBOの定義は、対象会社の経営陣が自社に対して行なう買収である、とされている。だが経営陣が自己資金で買収を行なえるケースは、少なくとも上場会社ではほとんど無い。経営者が自らのリスクによって自社を買収するやり方ではなく、実際にはファンドによるバイアウト、あるいはファンド&マネジメント・バイアウトであることが多い。資金の出し手である投資銀行の事実上の買収、というケースもある。レックス・ホールディングスの場合も、アドバンテッジパートナーズという投資会社が受け皿となり、資金の相当の部分がアドバンテッジ側から拠出されている。

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永沢 徹 [弁護士]

1959年栃木県生まれ。東京大学法学部在学中に司法試験合格。卒業後の84年、弁護士登録。95年、永沢法律事務所(現永沢総合法律事務所)を設立。M&Aのエキスパートとして数多くの案件に関わる。著書は「大買収時代」(光文社)など多数。永沢総合法律事務所ホームページ


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