振り上げたこぶしを
下ろせない人への対処法とは

 例えば、誰かが「まあまあ、人手不足で店員さんも忙しいんじゃないの? 濡れた場所も少ないから、とりあえずこのまま飲もう」という感じでなだめたとします。でも、この程度の説得で振り上げたこぶしを下ろす性格なら、最初からここまで怒りません。「いや、店員が8人もいて、客席が半分も埋まってないから、あの店員がボーっとしているんだよ」と冷静に分析していたりするものです。

 そうなってしまうと次に何と言っていいのか誰もわからず、嫌な雰囲気が生まれます。

 では、どうすればいいのでしょうか。こういった、どうしようもない重々しい空気を変えるには、「会話の土台からひっくり返す」という術を使うしかありません。

 事例の会話の土台は、「こぼれた飲み物」です。これで固まってしまっていて、会話参加者の全員が、このトピックに縛り付けられています。

 具体的に検証します。怒っている人は、「飲み物がこぼれているのに呼んでも来ない店員」について話をしています。こぼした本人は、「飲み物をこぼした自分が悪い」という事について話をしています。そして、仲裁に入ろうという人は、「飲みものをこぼした事なんて、もういいじゃん!」と話そうとしているわけです。

 ですから、空気を変えたければ、「こぼれた飲み物」とは全く関係のない話題を、真逆のテンションで話し出してみましょう。

 例えば、怒っている人が「店員が来ない! 何分待たすんだ!」と腕時計を見た瞬間、高めのテンションで「あ、これオメガじゃん! すごい!」と言ったらどうでしょう。キレている人も意表を突かれた事で、怒りのテンションが和らぎ、「まあね、最近、買ったんだ」と言ってくれる可能性があります。そして、例えばブランド時計の話題を続けるなど、その方向に会話を引っ張っていって空気を変えればよいのです。