JTBは2012年3月に創業100周年を迎えた。旅行需要が回復してきた中、次の100年に向けての布石に余念がない。

JTB社長 田川博己<br />海外の旅行需要は回復<br />ビジネスモデルの転換へ
Photo by Masato Kato

──円高で海外旅行が好調だ。

 2012年のゴールデンウイークの海外への旅行者は、2000年に次いで過去2番目に多いと予想している。国内旅行は東北が依然として厳しく、11年に比べて4.2%増で、10年の水準には戻っていない。

 海外旅行は昨年の4月末には手応えを感じ、7月には完全回復した。節電による夏休みの長期化が、国内の一部と、海外で追い風になった。

 インターネットの普及も大きい。昨年の4月は店舗での売り上げは大きく落ち込んだが、ネットでの販売は堅調だった。当時の自粛ムードで店舗に行くことがはばかられた消費者をネットが取り込んだのだろう。

──店舗とネットをどのようにすみ分けるのか。

 ネットでのホテルやツアー販売が増えるのは必然の流れだと考えているが、店舗には店舗の役割がある。「孫と一緒に行きたい」「20年ぶりの同窓会」など家族構成、旅行の目的に合わせて旅館や行き先を提案できることに、対面販売の強みがある。

──12年3月に創業100周年を迎えた。次の100年に向けた課題は?

 これまでの旅行業は、航空券の発券やホテル、旅館の宿泊予約の代行手数料で稼いできた。だが、ネットが普及している中、あっせん業では単なる価格競争に陥ってしまう。付加価値の高い商品や新しい旅行需要をつくり出していくことが課題だ。