一般に、従業員の仕事へのエンゲージメントは組織や上司がカギを握っているという論はよく見られる。だが筆者らの研究によれば、それは自分自身でコントロールすることもできるという。それも単に、1日の計画を立てることで改善できるのだ。本記事では、計画策定に有効な2つの方法を紹介し、それを効果的に活用するための手法を示す。


 よく知られている事実だが、多くの従業員は職場にそれほどエンゲージメント(意欲・愛着)を感じていない。2016年のギャラップによる調査では、仕事に意欲的に取り組んでいる従業員は、全世界でわずか13%であった。

 従業員のエンゲージメント(活力、熱意、集中力などを含む)をいかに向上させるかに関しては、組織的要因に重点を置いた論調が一般的だ。たとえば、職務設計、リーダーシップ、文化などである。

 だが、これらの要因は往々にして、従業員自身にはコントロールできないものだ。全般的な構図から示唆されるのは、従業員と仕事との適正を見出す努力ではなく、「従業員エンゲージメントは組織と上司に左右されてしまう」という状況である。

 従業員は、より適切な自己管理によって、仕事でのエンゲージメントをみずからコントロールできるのではないだろうか――。我々は『ジャーナル・オブ・アプライド・サイコロジー』誌に掲載された研究論文の中で、この点を調査している(共同研究者はテキサス大学オースティン校のアンドリュー・ブロツキー、メリーランド大学のサブラマニアム・タンギララ、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のサンフォード・デボー)。

 検証の結果、仕事におけるエンゲージメントと生産性を高めることは、「1日の計画を立てる」という単純な行為によって可能であることが明らかになった。

 ただし、計画策定による効果は、次の要因に左右されることがわかった。従業員がどのタイプの計画法を採用したか、および、日々の仕事の中でどの程度頻繁に中断が入ったか、である。

 我々は2種類の計画法に着目し、それらが動的な仕事環境において従業員エンゲージメントにいかに影響を及ぼすかを調べた。

 1つ目は、一般的に「時間管理計画」として知られるものだ。「To Doリスト」を作成し、作業の優先順位づけとスケジューリングをして、自分の時間を管理する。この方法は広く普及し、そのメリットが高く評価されているものの、現実の仕事の場における効果については、実際にはほとんど調査されていない。

 2つ目は、「不測事態への対応計画」(コンティンジェンシー・プランニング)と称されるものである。仕事において外部からの邪魔による中断が入る可能性を考慮し、その対応策を立てておくことだ。不測事態への対応計画は、時間管理計画ほど広く採用されていない。というのも、人は計画を立てるにあたり、達成量を過信して、邪魔が入る可能性を軽視(あるいは完全に無視)することが多いからだ。

 理論上は、どちらの計画法も従業員エンゲージメントを高めるはずだ。なぜなら両方とも、その日の目標をより具体的に設定するという作業を伴い、それが自分の時間と意識を集中させることにつながるからである。さらに、作業の達成状況がよりはっきりと見えるようになるため、前進している感覚も増すはずだ(テレサ・アマビール著「進捗の法則」を参照のこと)。

 しかし、時間管理計画の効果は、たび重なる中断にさらされると妨げられるのではないかと我々は考えた。中断されることで苛立ち、計画した「To Doリスト」が進捗していないように感じるからだ。これとは対照的に、不測事態への対応計画は、従業員が多くの中断に直面する場合に役に立つだろう、という案を我々は提示した。さまざまな邪魔が入っても、作業の行き詰まりや苛立ちを起こさずスムーズに対応しやすくなるからだ。