この先、付加価値を生み出すことのできない仕事は、早晩AIに取って代わられるだろう。では、新たに生まれた時間は何に使うべきか。人生100年時代への分岐点は、この「果てしなき暇」の使い方で決まる。時間の消費者になるか、マネタイズできる者になるか。今は、映画『マトリックス』で描かれた世界を「どっち側で」生きるかの分岐点である。グーグル、ソフトバンク、ツイッター、LINEで「日本侵略」を担ってきた戦略統括者・葉村真樹氏の新刊『破壊――新旧激突時代を生き抜く生存戦略』から、内容の一部を特別公開する。落合陽一氏推薦!

人生100年時代の分岐点は、<br />「時間の使い方」にある<br />

「週休5日」は幸か不幸か?

 長時間労働や過度の残業が日本経済の足を引っ張って生産性低下の原因となっているとして、安倍政権による「働き方改革」の掛け声が、このところかまびすしい。

 もちろん、いわゆる「ブラック企業」という言葉に代表される労働者酷使による過労は、公衆衛生の面でも見過ごすことのできない問題であり、それが自殺にまでつながっているとするならば、まずは最低でも労働基準法を厳守させるというのは、政府として当然の動きだ。

 この「働き方改革」に呼応して、生産性が低い仕事をする時間をなくして、より生産性の高い仕事へとシフトする動きを見せる企業も増えている。

 例えば、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)と呼ばれる、従来オフィスのホワイトカラーが手動で行っていた作業を自動化する技術の導入だ。

 広告会社の電通は、このRPAで2017年末までに合計400件の業務を自動化、2019年末までには2500件の自動化を目指すというが、これによって、広告掲載先のメディア企業からメールで送られてくるエクセルシートの集計に、従来は手作業で3時間かかっていたものが、数秒で終わるという。

 恐らく、このような業務は枚挙にいとまがなく、すべて早晩AIに取って代わられていくことだろう。

 今後は人間がやっても付加価値を生み出すことのできないような仕事は、AIに任せるようになるだろう。広告掲載先のメディア企業から送られてきたエクセルシートの集計を、手作業で3時間かけてやるような仕事は、不毛以外のなにものでもない。このような、楽しくなく面倒な仕事はすべて自動化されていく。

 しかし、そうなったときに、新たにできた時間は何に使われるようになるのか?

 かつて1日何時間程度の労働時間が生産性の観点から適切なのかという研究がなされたことを『破壊――新旧激突時代を生き抜く生存戦略』で紹介しているが、もし今同様の研究を行った場合、果たして1日8時間労働というのは適切なものなのだろうか。もしかしたら、その半分の4時間が適切なのかもしれない。

 その場合、一人一人は1日4時間働いて、仕事を分け合うようになるのだろう。あるいは、1日4時間でも多いくらいで、誰もが週2日も働けば良いだけになるのかもしれない。

 つまり「週休5日の時代」だ。そうなると、多くの人にとって、目の前に広がる未来は、膨大な暇な時間と、その当て所どもない暇をどうするのかという、果てしなき暇との闘いの日々となる。

 確かに、働くのが嫌いで、とにかく早く定年退職をしたい、と願っている人にとっては、夢のような世界かもしれない。

 しかし、それもその暇を潰すためのお金があっての話だ。前出の同書では、60代以上の消費者ローン利用者の10.5%がその利用目的として旅行を挙げていることを紹介したが、暇潰しにはお金がかかるのだ。