商工組合中央金庫が起こした不正融資問題を機に、政府系金融機関の在り方が問われている。民間から「民業圧迫だ」という指摘が続く中で、同じ政府系金融である日本政策金融公庫(公庫)はどんな姿を目指すのか。田中一穂総裁に話を聞いた。

日本政策金融公庫総裁 田中一穂Photo by Toshiaki Usami

──これから力を入れる事業を教えてください。

 公庫が取り組むべきテーマとして、創業支援、事業承継支援、苦境に陥った企業の事業再生、企業の海外展開支援の四つを掲げました。加えて、公庫の根っこの部分である、セーフティーネット機能を果たし続けます。

──企業融資では、公庫は国の財政資金を利用して低金利で融資できるため、民間金融機関から「民業圧迫だ」と指摘されています。

 全国地方銀行協会が実施したアンケートによると、公庫が起こした民業圧迫の事例は約1年間で260件あるとのことですが、民間との協調融資の実績はそれ以上に存在しています。2017年度は2万3000件の実績があり、今年度は4月以降、昨年度よりも件数が増加傾向にあります。

 足元の状況に反して、なぜ民業圧迫の指摘が出てくるのか。原因の一つは、過去の経緯をきっかけに不満を持った方が民間の経営層にいるからではないかと考えています。不満を取り除くために銀行の首脳と対話を重ねており、この活動に常日頃から取り組みます。