目標達成のためのアプローチを正しく選択する

 こんなケースもある。ある機械メーカーの社長と話したときのこと。彼は成長志向が強く、何としても世界市場で業界首位のメーカーを追い抜いて世界一の機械メーカーを目指したいと言っていた。

 ところが、彼がとった戦略は「顧客に対するグローバル対応のための組織改革と購買コストの削減」というものだった。

 世界一というのは、おそらく売上高(金額)での世界一の意味だったと思うが、それを実現するためのM&A戦略とか、新技術の開発とかに力を集中するのではなく、組織改革とコスト削減という遠回りな道を真っ先に選んだのだ。

 ひょっとすると、M&A戦略とか、新技術開発には自信があって、会社内で極秘にプロジェクトを進めていたのかも知れない。

 しかし、組織改革とコスト削減の大プロジェクトを組み、社員の注意をそこに向ければ、それ以外の分野への意識が下がるのは当たり前。やはり、彼の判断は間違っていたと言わざるを得ない。目標を達成するためには、そのために必要なことを見極めて、それに向かって最短距離を走ることだ。

 基本的なことだが、これを忘れてしまうことが多いので、ときどき、あなたのやっていることが目標達成に結びつくかをチェックすることが必要だ。

戦略を事実に基づいて考える

 目標が明確に定まったら、次に必要なのは、それを達成する方策、つまり、戦略を考えることだ。

 だいたい、どこの会社でも、どこの社長でも戦略を考えることはするのだが、その考え方が間違っている。つまり、戦略を考えるときに、噂やお話に基づいて考えてしまうことが問題だ。そうなると、遠回りをすることになり、時間を無駄にしてしまう。

 たとえば、私が会ったことのある往年のベンチャー企業の社長の話。IT関連の販売会社である。

 この会社は、あるビジネスが当たって、10年以上前に株式公開までたどりついたのだが、それ以降、新しいビジネス・ラインを立ち上げられずにいた。

 この会社の社長は顔が広いこと、騙されやすいことで有名で、いろいろな人がいろいろな話を持ってくる。

「今度、シリコンバレーで××という技術が開発されたので、それを扱ってみませんか」とか、「◯◯というコンピューター・セキュリティ・ソフトの独占輸入販売権を5000万円で買いませんか」とかいう話である。

 この社長は、なんとかじり貧の既存事業の依存度を減らし、新しい事業を立ち上げたいものだから、どの話を聞いても、「面白いじゃないか」と感じてしまう。そのくせ、意気地がないので、どの事業にも数千万円の小金を投資する。結果は、不良投資の山。