3分の2の期間で終わらせるスケジュールを立てる  

 こうして戦略が決まったら、実行計画を立てる。そのとき重要なのは、時間に余裕を持たせてスケジュールを立てることである。

 たとえば、6ヵ月後にすべてを終わらせたいと思っていたら、4ヵ月で終わるように計画を立てる。最初から6ヵ月かかるようなスケジュールを立ててはいけない。

 これまで述べてきたように、作った戦略は仮説の中で一番確率が高いものにすぎない。実行段階に移れば、当然修正を余儀なくされる。

 また、実行段階に移ると、相手のある世界になるから、相手の反応が鈍いと、どんどん時間がたっていく。

 仮説構築段階の、自分で時間をコントロールできた状況とは大きく変わってくるのである。だから、そのために余分な時間をとっておかなければならないのだ。  

 ところが、多くの人は余裕を見ずに、スケジュールを立ててしまう。

 これは中学、高校の中間試験、期末試験のときを思い出してみればわかるだろう。

 読者の皆さんの多くが、一夜漬けの計画を立てたことがあるはずだ。試験前日の夕方勉強を始めて、夜1時か2時ごろまでにすべて覚え込むという。そして、忘れる前に試験を受けて、なんとか赤点を免れる。

 ところが、やってみると、わからないところが出てきて、覚える前に理解することに時間がかかる。その結果、終わったら朝の5時。2時間だけ寝て、学校に行くが、頭がすっきりせず、いい点がとれない。

 こんなことになるんだったら、試験の1週間前に一度勉強して、理解するところまではやっておくべきだったと後悔したことがきっとあるだろう。  まさに、「後悔先に立たず」である。

 こうしたことになるから、スケジュールは3分の2で終わるように立てるのがベストなのだ。こうしておいてこそ、何か不測の事態が起きても、仕事を予定通りに終わらせることができるようになるのである。

戦略はどんどん修正する

  こうして一応の戦略ができたら、すぐ実行に移してみることだ。

 たとえば、転職をするときのことを考えてみよう。

 自分では、自分で財務の分野を専門としたいと思い、その方面での転職を希望している。確かに、勉強をして、USCPA(米国公認会計士)の資格はとったが、これまでは、ずっと人事畑で、実務の経験がない。

 エージェントに登録して、声がかかるのを待っているが、もう3ヵ月待てど暮らせどまったく声がかからない。

 こんなときは、戦略を修正したほうがいいのかも知れない。

 エージェントに自分の経歴の場合、いきなり財務畑への転職は難しいのか、そうだとすると、どうしたらいいのかを相談してみるべきだ。どうしても、財務畑への転換を狙いたいのなら、今いる会社内での異動を強く運動したほうがいいのかも知れない。

状況の変化に遅れないよう、適時適切に対応する

 次に、仕事の例を考えてみよう。

 あなたの会社で新製品が投入され、その売上ノルマが与えられた。

 あなたは、親密な顧客にねじ込み、新製品をある程度売り込もうという戦略を立てたとする。あなたの計画によれば、新製品を持っていって頼み込めば、50%以上の確率で成約できると踏んでいた。

 ところが、既存顧客を訪問してみると、景気の低迷から支出の削減を進めていて、なかなか新製品には手を伸ばさない。

 数件回って同じような反応を得たら、もう戦略を修正したほうがいい。お付き合いでの売り込みから、新製品の既存製品に対するコスト削減効果を強調し、リプレースメント(置き換え)をお願いするとか……。

 実行段階に至ると、自分ではコントロールできない様々な要素が出てきて、状況がどんどん変わっていく。こうしたときには、ためらわず、立てた戦略をどんどん修正していくことが必要だ。