優れた企業文化とは何か。それは、充実した給料や福利厚生の有無を示すのではない。企業文化の構成要素である「行動」「制度」「習慣」が組織の価値観と一致していることだと、筆者はいう。そして、それが一致していなければ、表面的にはどれほど活気ある企業であっても、社員は不信感を覚えて去っていくことになる。本記事では、真に素晴らしい企業文化を構築するために、行動、制度、習慣、それぞれについてすべきことが示される。


「わが社の企業文化はすばらしい」

 このセリフ、1度は聞いたことがあるだろう。あるいは、言ったこともあるだろう。だが、それはったい何を意味しているのか。

 卓球台や無料の食事、ビールサーバーがあることだろうか? 答えはノーだ。

 ヨガにクロスフィットの教室に、マッサージチェア? 私にまさに必要なものだが、これもノーだ。

 持ち株報酬で急成長中の最先端をいくチームの将来性? 近づいてきたが、やはりノーである。

 企業文化はよく、「わが社のやり方」などと漠然とした表現で説明される。しかし、何かに役立てるなら、もう少し具体性が必要だ。

 20年以上におよぶ人事部門での経験を踏まえると、これまで勤務した中でも優れた会社は、企業文化に3つの要素があることを認識していた。行動、制度、習慣の3つであり、それらの指針となる企業価値があった。

 この3要素すべてが組織の掲げる価値観にぴったりと沿って初めて、優れた企業文化が生まれる。そこにギャップが生じると、さまざまな問題が起こるようになり、最終的にはすばらしい社員が退職していくようになる。

 ギャップはさまざまな形で現れる。「ワークライフバランス」を標榜する会社で、有給の育児休暇がなかったり、毎晩の残業が当り前だったりする(行動と制度のギャップ)。あるいは、「人を育て、学習する組織」を自称しながら、講習やオンザジョブ・トレーニング(OJT)の時間を社員に与えないところもある(制度と習慣のギャップ)。さらには、合意形成できるようになることが大事だと言いながら、実際に昇進させるのは一方的にものごとを決めるタイプ、という会社もあるだろう(行動と習慣のギャップ)。

 こうしたギャップは、「最高文化責任者」や「企業文化委員会」を設置したところで、絶対に解決できない。同様に、やる気を引き出すリーダーシップや企業理念の浸透、それに社員を自然体で働かせることも重要だが、それらはすべて健全な企業文化の副産物であって、企業文化を生み出すものではない。

 ではいったい、不完全な企業文化はどのように修復すればよいのか。まずは、いまの会社における行動と制度、そして習慣を見直すことだ。