「一人一人にとっていい会社は異なる」。そう語るのは、年間約100もの会社を訪問して経営を調査・研究する、イマージョンの藤井正隆代表取締役社長だ。親世代にとって「いい会社」を見極めるポイントは?息子・娘の世代に向けて「間違わない会社選び」とは? 藤井社長は語る。

イマージョン
藤井正隆代表取締役社長

「人を大切にする経営学会」理事。法政大学大学院政策創造研究科博士後期課程修了。大手コンサルティング会社所属後、組織開発コンサルティング会社を設立。年間約100社を視察・研究する。著書に『「いい会社」のつくり方』(WAVE出版)『社員を大切にする会社ほど伸びる理由』(クロスメディア・パブリッシング)他。

 時代の変遷とともに、業界や会社には栄枯盛衰があります。今、有名な大企業であっても、その繁栄が永遠に約束されているわけではありません。

 私が社会に出たのは1985年ですが、当時優秀だった同級生たちは、銀行や保険会社など、給料も良く安定した金融業を目指して就職していきました。その後、彼らはどうなったのか? その多くが合併の渦の中で、リストラや転職を余儀なくされたのです。

 会社の寿命は以前と比べて、とても短くなっています。昔は30年と言われていましたが、最近はそのサイクルが早くなり10年未満とも言われています。いわゆる短寿命時代であり、会社が生き残るためには、急激な環境変化に適応できる経営力が必要だと言われています。では、そうした力を持つ会社を見極めるポイントはどこにあるのか?

 一言で言えば、その会社が「何を大事にしているのか」に注目すれば良いのです。

100社あれば100通りの経営がある

 私は年間約100社に足を運び、視察や研究を行っています。現場で実際に見てきたことを理論的に整理し、分かりやすく伝えるのが仕事です。その私が確信しているのは、どのような環境下でも成長し続ける「いい会社」とは、“人を大切にしている会社”であるということが大前提です。もちろん、売り上げや利益を目指すのは会社として当然ですが、その売り上げや利益は、あくまでも人を幸せにする手段、あるいは人を幸せにした結果なのです。

 ここでいう“人”とは、社員やその家族、取引先やお客さまなど、その会社を取り巻く全ての人々のことを指します。それを大前提とするならば、必ずしも有名な大企業が「いい会社」であるとは限りません。大企業の中には、売り上げ目標や株主を優先し、利益の出し方がフェアではなく、リストラを当たり前に行うところもあるからです。

 そして、会社選びで大切なのは、一人一人にとって「いい会社」が異なるということです。十人十色、顔が違うのと同じように価値観は異なります。人を大切にする経営を実践している「いい会社」であっても、100社あれば100通りの経営があります。