竹内  そうです、外の世界を知っている人ですね。エンジニアはとても特殊な世界に生きていて、同じ職場で10年、20年もの間、社外の人と名刺交換をしたことがないという人もいる世界なんですよ。20年間、ずっと同じ人と同じ社食でメシを食っているんだから、外の世界がわかるはずがない。もちろん、儲かっている間は、日本でもアメリカでも辞めません。問題なのは赤字に転落しても、なぜか儲かっているときの感覚のまま生きているんですね。

不採算部門の方が昇進が早くなる!?

ちきりん  危機感がないってことでしょうか?

竹内  ない。コア事業以外の人にも危機感はないでしょうね。それどころか、他部門の人に食わせてもらってラッキーと思っている人も多いのでは。逆に、液晶やフラッシュのように儲かっていて、会社の屋台骨を支えている事業部に携わっている人は、それこそ必死ですよ。自分たちが倒れたらおしまいだって、わかっていますから。

ちきりん  それでも、儲かっている部門も儲かっていない部門も給料はみんなだいたい同じですよね? 優秀な人はどこの部門でも高いんでしょうけど。

竹内  同じどころか、逆なんです。たいていのメーカーでそうでしょうが、一つの部で昇進するのは何人と決まっています。そして儲かっているコア事業ほど優秀な人ばかりですよね。そうすると、優秀な人の昇進が他部門より遅くなるという不思議な現象が生まれてくるんです。逆に、不採算部門でそこそこ頑張っている人はぐんぐん昇進していく。

 私の友人が東芝を辞めて、国内の電機メーカーに転職してiPhoneなどに搭載されるカメラをつくってるんですよ。当初、彼を中心に数人で始めた事業だったのが、いまや業績バツグンで大事業に成長したのはいいんですが、ここでもおかしな現象が起きた。不採算部門から人がどんどん入ってくるようになると、年功序列だから、あとから横滑りした他部門の年配者が友人の上司になるんですよ。

ちきりん  業績も横取りされちゃいそうだし。よくそんなばかばかしい仕組みが未だに続いてますよね。驚きです。

沈みゆく会社から<br />なぜエンジニアは逃げ出さないのか?