エンジニアはメールの書き方から見直そう

竹内  もう一つ、エンジニアに言いたいことがある。ビジネススキルの問題なんです。エンジニアの人が私を訪ねてくれるのはすごく嬉しいことですけど、私だってすごく忙しいわけです。ふつう、人に会って何かを頼もうとするときは、事前に練った提案を持ってきますよね、それなしに来られても、私も困るんですよ。

工場を日本に残す意味はホントにあるの?

 大企業の技術系の部長クラスの方の例ですけど、今度、早期退職をするので何かないですか、って言ってくる。突然そんなことを言われても、こちらとしては人材バンクじゃないんだから対応のしようがない。そういう人はメールも何を頼みたいのかわからない。この辺はトレーニングの問題なのかもしれませんけどね。

ちきりん  専門外の人に自分の研究内容を話して、自分が何をやっているか、それにどんな意味があるのかを理解してもらうトレーニングが足りないのかもしれません。そんなんだと、いくらスゴイ技術力をもっている人でも、ベンチャーキャピタルを相手にそのすごさを説明できないから、独立資金や運転資金を引き出すことができないですよね。

 相手にお金を出してもらうという関係なのに、相手側が努力して自分の研究内容を理解すべきだと勘違いしているのかもしれない。学生時代から文系の友達に、いまこんなことをやっているんだと説明していれば、少しは違うと思いますけど。失礼なメールで仕事の斡旋を頼んでくる人にも同じことが言えますよね。

竹内  メールの書き方は非常に大事ですね。現在の共同研究でも、企業との最初の契約こそ、私がやるけど、その後の技術的なやり取りは学生に直接、コンタクトを取るようにさせているんです。だけど、学生にそのままメールを送らせると、礼儀もそうだし、内容も意味不明という、とんでもないメールを送ってしまいますね。だからメールについては最初からバンバン文句を言っています。

ちきりん  竹内先生は学生さんにメールの書き方を指導されているけど、ほとんどの先生は学生にそのような指導をせずに卒業させてしまうからそういうスキルがないままになってしまうんでしょうね。

竹内  企業に入って困れば修正も利きますが、技術の中だけでやっていくと、そういうスキルがなくてもけっこう生きていけるんです。これが困りものです。だから誰にも教えられないで過ごすことになる。