人手不足や市場の飽和が叫ばれるコンビニ業界で急浮上しているのが、社会保険への未加入問題だ。国は従業員や店のオーナー自身が社会保険に未加入の加盟店を調べ、加入促進に力を入れている。だが保険料は、経営が順調な加盟店にとっても大きな負担だ。『週刊ダイヤモンド』7月28日号の第2特集「コンビニクライシス 社会保険が追い詰める加盟店経営」の特別版として、社保未加入問題をレポートする。(「週刊ダイヤモンド」編集部 岡田 悟)

「私たちとしては、本部は店(加盟店)にできるだけのことをしないといけないと。店からすると、痒い所に手が届くとまではいかなくても、それに近いものをつくることができた。世界で初めてです」──。

コンビニ加盟店の苦悩、本部は「社会保険未加入問題」も対応渋る6月のパーティに姿を現した“カリスマ”鈴木敏文・セブン&アイ・HD名誉顧問

 2016年にセブン&アイ・HD会長の座を追われた日本のコンビニの生みの親、同HDの鈴木敏文名誉顧問。約2年ぶりに公の場に姿を現したのは、6月14日、東京都港区内のホテルで開かれたセブン-イレブン・ジャパン(SEJ)の国内2万店記念パーティーだった。政財界の大物や取引先幹部が居並ぶ中、その足取りと語気の強さは、85歳という年齢を感じさせなかった。

 少年のように目を輝かせながら鈴木氏を見詰める井阪隆一HD社長の後ろで、グループ最大の稼ぎ頭となったSEJの古屋一樹社長の表情はさえなかった。うつむいて顔をしかめたり、眼鏡に手をやったり──。その胸中を推し量るすべはないが、3週間前、5月24日に開かれた株主総会は、司会を務めた井阪氏よりもむしろ古屋氏にとって厳しい時間だったことは確かだ。

 1990年にSEJの加盟店を始めたというオーナーの株主が、「日販50万円からスタート。毎日働き、最近は競合(他チェーン店舗)の閉店もあって、80万円に伸びたが、その途端、近くにSEJが出店した」と暴露。その結果、このオーナー株主の店舗は日販が65万円に下がった。「行き過ぎたドミナント(限られたエリアへの集中出店)、人件費のアップ、社会保険への加入と、店の経営は日々厳しくなっている」と声を震わせながら訴えたのだった。