狙いは寂しい高齢者写真はイメージです Phot:PIXTA

「毒婦」と呼ばれた筧千佐子
11人の“夫”が亡くなる

「毒婦」と呼ばれる女性が世間を騒がすことはあるが、見るからに妖艶さを身に纏っていたり、いかにも男性がだまされたりするんだろうなという雰囲気を醸し出したりしている場合は意外に少ない。京都、大阪、兵庫3府県で起きた連続青酸死事件の犯人・筧千佐子(逮捕時67歳)も、どこにでもいそうな気さくなおばちゃん、どころか、おばあちゃんにしか見えない一人だろう。

 事件は、2013年12月に死亡した京都の筧勇夫さん(75歳)から、青酸化合物が検出されたことから全てが始まる。警察が妻の千佐子の周辺を探ると、1994年に夫を病気で亡くして以降、結婚相手や交際した高齢男性が相次いで死んでいることがわかる。なんとその数は11人。結婚相手の遺産はもちろん、内縁関係でも、ご丁寧に遺言公正証書まで作成させて資産を相続していたために、連続不審死事件の様相を帯びてくる。

 著者は彼女との対話や手紙のやりとりを通じて、事件の全容に迫るが、読み進めれば進めるほどに、千佐子の不気味さが浮き彫りになる。