農林水産省

農林水産業イノベーション 第1回
農林水産業の未来を支える新しい産学官連携のかたち

著者・コラム紹介
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IoTやAI、ロボットなどの活用により、多くの産業で劇的な構造変革が起こるのは間違いない。なかでも最も変ぼうを遂げる産業は農林水産業だろう。既存の業界の壁を越えた「知」を集積することで農林水産・食品産業の明日を築く。すでに未来は見え始めている。

新しい産学官連携のかたち
『「知」の集積と活用の場』

 日本の農業は今、技術の進化に受け身でいるのではなく、むしろIoTやAI、ロボットを積極的に活用することで自らを変えようとしている。

 それを深く実感させられたのが、2018年7月27日に東京・渋谷で開かれた『「知」の集積と活用の場産学官連携協議会』定時総会での基調講演やポスターセッションにおけるトークセッションなどだった。そこには、「日本の農業の未来があった」と言っても過言ではない。

 例えば基調講演でオプティムの菅谷俊二社長は、同社が18品目18都道府県で展開する「スマート農業アライアンス」の取り組みを紹介した。

オプティム
菅谷俊二 代表取締役社長

 オプティムはそもそも、AIやIoT、ビッグデータのプラットフォームを提供するソフトウェア開発の会社で、「『○○×IT』によるイノベーション戦略を推進する」を掲げている。菅谷社長は、「IoTやAIの活用で最も変わる産業は農業でしょう。効率化だけでなく、手間暇をかければ付加価値が高まる分野こそ農業だからです。つまり多くの手間がかかっていたことがIoTやAI、ロボットなどで容易にできるようになることで、作業者はより付加価値を高めるための手間に力を注げるようになるのです」と語る。

 オプティムのスマート農業の取り組みの一例は次のようなものだ。まずドローンを飛ばして畑を上空から撮影する。撮影画像や動画をAIで分析することで、害虫が発生している個体(作物)を特定し、ピンポイントで農薬を散布する。これまでの実践例では、枝豆や大豆の場合、農薬の使用量を90%削減でき、残留農薬の量は「不検出」となった。対象とした作物は米、キャベツ、ブロッコリー、ジャガイモなどだ。

 菅谷社長は、「ヘリコプターの全面農薬散布を、ドローンのピンポイント農薬散布に変えれば、農薬の使用量を減らせるのではないか」と語る。つまり新しい「環境に配慮した減農薬栽培農業」が実現する。

 オプティムは、収穫された「スマート枝豆」などを買い取って販売する事業も始めた。環境に配慮した減農薬栽培農業なので市場相場よりも高く売れ、市場価格を上回った分の収益は農家と分かち合う。

 「国内の農作物の市場は8兆円規模ですが、このうち農家収入は3兆円に過ぎません。この3兆円を奪い合うのではなく、8兆円市場を拡大する仕組みづくりに貢献したい」と菅谷社長は言う。

 例えば有機栽培作物の市場は、欧米では1人年間1万円程度だが中国では75円にとどまる。かつ日本国内の有機栽培の耕作地は全耕作地の1%程度。つまりオプティムのスマート農業の技術を駆使することで、輸出拡大も視野に入れた有機栽培農業の拡大に貢献できるという訳である。

(左) まいすたあ 齋藤一志 代表取締役
(右) 関東地区昔がえりの会 小暮郁夫氏

 また、ポスターセッションの目玉企画として開催されたトークセッションでは、生産者と研究機関の連携を図ることを目的として、異分野との連携を求める農業ニーズがいくつも提示された。山形県で米の6次産業化を推進している、まいすたあの齋藤一志代表取締役は、「田んぼや畑の法面の草刈りは重労働で、“草刈りルンバ”のような自動機械があればよいと願うし、センサーを搭載したドローンで上空からヒエの発生を確認して除草剤を散布できるようになればとも願う」と先端技術の農業分野への活用について期待を語った。

 加工業務用玉ねぎの国産化プロジェクトを推進している「関東地区昔がえりの会」の小暮郁夫氏は、「玉ねぎは3月下旬頃から肥大期を迎えるが、このときの乾燥と肥大の関係を把握でき、灌水の意思決定を支援するようなシステムがあるとありがたい」と語る。

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https://www.knowledge.maff.go.jp/




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