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人間の「無意識の偏見」が
AIに与える負の影響とは何か

――グーグルのAI研究者、フェイフェイ・リー氏に聞く

末岡洋子
2018年8月10日
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技術がパワフルになると
責任も増していく

――AIの研究という点では、現在はどの位置にいると考えていますか。

 AIの歴史はわずか60年。その間いくつもの波がありました。

 一口にAIといっても、たくさんの分野があります。私が専門とするコンピュータビジョン、そのほかにも自然言語処理、スピーチ認識などがあります。これらの分野に強く関連している新しい技術分野が機械学習です。1980年代頃に統計学モデルとしてスタートしました。

 21世紀に入りAIは大きく進化を遂げますが、これは、十分なデータ、パワフルなコンピューティング、それにリサーチの3つの要素が融合した結果と言えます。

 それでも、まだ制限があり限定的です。例えば、環境保護団体がイルカの追跡に我々の画像認技術を活用していますが、新しいイルカの画像(サンプルがない)、稀なイルカの画像(サンプルが少ない)に対応する「教師なし学習」「半教師あり学習」、それに「One Shot Learning」「Few Shot Learning」などはまだ新しい分野です。これらは、機械学習に柔軟性を持たせるにあたって必要な分野となります。

――AIは負の作用ももたらしかねません。グーグルは先に「AI Principles」を発表しました。AIを何に使うか、あるいは使わないかを明確にしようとしたものです。この狙いは何でしょうか。

 人間は文明化の歴史において、継続的に革新的な科学と技術の追求を続けると同時に、責任を理解して実行してきました。AIも例外ではありません。技術がパワフルになると、責任と課題が問われます。グーグルはAIを推進する1企業として自分たちの責任を考えています。他のすべての企業、開発者も自分たちの責任を認識すべきでしょう。

“我々は絶対に間違いを犯さない”と断言することはできません。ですが、少しでも早期に課題を認識して共同で作業することが重要だと考えます。先に発表したAI Principlesはそれを表明したものです。グーグル、そして他の企業が公正(フェア)な機械学習、そして相互運用性、透明性、倫理的なAIなどについて考えることで、技術が善意ある形で開発、実装されれば、その技術のメリットを受けられる対象は広がります。

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末岡洋子

すえおか・ようこ/フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている。

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