いま、ロボットによる業務プロセスの自動化が進んでいる。この技術を導入する際、単なる自動化で終わらせるか、プロセスの変革を実現するかという分かれ目がある。その判断を正しく行えば、自動化は、既存の古びた業務慣行から脱却する絶好の機会になりうる。


 最新の自動化技術の1つとして、ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA:ロボットによる業務プロセスの自動化)が台頭している。RPAは、複雑なデジタルプロセスの自動化を可能にするソフトウェアツールの一種だ。ユーザーインターフェースを利用し、あらかじめ規定された一連のルールに従うことで、人間がやるのと同じ方法で処理を実行できる。

 RPAが他の自動化技術よりも際立っているのは、1つもしくは複数の情報システムを使う人間を「模倣」する能力だ。これにより、開発にかかる時間が削減されるとともに、機能の幅を広げて、より広範な業務活動において自動化を行うことができる。

 RPAは、金融プロセスの自動化にもよく使われている。請求書と出荷通知の照合、あるいは、コールセンターの音声テキスト化システムやeメールから、記録に残す取引システムへのデータの転送などである。多くの組織が、バックオフィスやミドルオフィスでのプロセス自動化にRPAを採用し、その大部分が投資に見合った成果を迅速に上げている。

 とはいえ、誤解してほしくないのだが、もし目標が現在の業務プロセスの自動化ではなく、プロセスの再編や改善であれば、RPAのみを用いるのは最善の方法ではない。プロセス管理に関する4冊の著書があるアンドリュー・スパニーは、我々にeメールで次のように説明している。「RPAは何かを構築し直すということはしません。ある業務活動がそもそも必要か否かを、尋ねてくることもありません。プロセスのエンドツーエンドのレベルではなく、タスクレベルで稼働します」

 しかしRPAは、(人間による)業務プロセスの改善と組み合わせることならばできる。労働力のアービトラージ(安価な労働力の活用による価値創出)にかかるコストを省く、といった基本的な目標にとどまらず、プロセスを改善したい――企業はそう目指すならば(目指すべきだが)、RPA技術の導入前にすべきことがある。自社の既存の業務プロセス、およびRPAによって実現したい新たなプロセスの双方について、しっかり理解するということだ。

 ところが、多くの企業はそれをしない。自動化の対象となる現行のプロセスの工程を、改善も検証もせずに、現状のまま強化すべくRPAを導入してしまう。結果として、ある程度の省力化を達成できるが、多くの場合、プロセス成果、品質、コスト、そしてサイクルタイムを劇的に改善するチャンスを逃してしまうのだ。