サービス業へのシフトチェンジで
ネクストステージへ

 明和製紙原料は、岡山市で1948年に創業して以来、地域に密着して70年の歴史を重ねてきた。

「古紙卸売業界では量が命なので、当社のように1箱から処分に応じるスタイルはかなり異色です。当社も10年前までは、回収業者から買い取った古紙をプレス加工して製紙会社に売る、という典型的な卸売業のビジネスモデルでしたが、今は卸売業からサービス業へシフトチェンジしました」

スーパーへの買い物ついでに不要になった新聞、チラシ、雑誌、本を回収ボックスに入れるとポイントが貯まるスーパーへの買い物ついでに不要になった新聞、チラシ、雑誌、本を回収ボックスに入れるとポイントが貯まる

 変革のきっかけとなったのが、2009年に駒津氏がプロジェクトリーダーとなって立ち上げた「えこすぽっと」事業だ。

「かつて古紙には資源としての大きな価値がありましたが、古紙リサイクル市場の競争が激化して古紙価格がどんどん下がり、従来通りのビジネスモデルは確実に行き詰まりつつあります。そこで、もっと古紙が発生する現場に近づき、生活者や事業者とつながらなくてはいけないと考えました」

 その手はじめとして、近所のスーパーマーケットと提携し、店頭に回収ボックスを設置して家庭から広く古紙を集める取り組みをスタート。新聞紙やチラシ、雑誌、子どもの教科書やノートなどの古紙を自由に投入でき、持参した古紙の重さに応じてポイントがたまり、たまったポイントをスーパーの商品券と交換できるという仕組みだ。このサービスは好評を博し、多くの人が買い物のついでに楽しみながら古紙回収に協力してくれるようになったという。

「えこすぽっと事業で学んだのが、ユーザー目線でサービスを提供することの大切さです。提携スーパーの敷地で、提携スーパーの顧客を対象にした事業なので、見た目の清潔さ、分かりやすさ、使いやすさには特に配慮し、掃除をゆきとどかせ、メンテナンスをこまめに行い、お客様とコミュニケーションをして……。このあたりから社員の意識も大きく変わってきました」

 異業種の知見を積極的に社内に取り入れるために、IT企業、小売業、ホテルマンなど異業種で経験を積んだ人材の採用も積極的に進め、スタッフの多様性も高まっている。