「まだ店頭に並んでいない65型テレビの予約注文が殺到している」(家電量販店のバイヤー)

 シャープのLEDテレビ「LED AQUOS」が好調な滑り出しを見せている。「例年の新製品投入の初動と比べて、約2倍の受注がある」と、シャープ幹部はホクホク顔だ。

 11月10日に40型など3モデルを投入、25日には65型が出揃う。液晶パネルのバックライトに、蛍光管ではなく、LED(発光ダイオード)が採用されたLEDテレビは、年末商戦の起爆剤として期待されており、ソニー、東芝も参入している。

 好調の要因は、価格訴求力にある。昨年にもLEDテレビを販売したが、65型で約100万円と高かった。今年は、60型で約55万円と半値近くになり、40型で25万円と普及価格帯に近づいた。エコポイントを利用すれば、さらに値ごろ感は高まる。

 この新製品群に搭載された液晶パネルは、10月に稼働した大阪府・堺新工場から初出荷されたものだ。堺工場は、液晶パネルを切り出すマザーガラスが第10世代(タタミ5畳分に相当)の、世界最新鋭工場である。

 もっとも、シャープはLEDテレビ本格参入を「出遅れた欧米市場を攻略する戦略兵器」(幹部)と位置づけており、国内市場の快調に浮かれてもいられない。

 2006年夏に三重県・亀山第二工場が稼働して3年あまり。国内では無敵のシャープだが、米ディスプレイサーチによれば、世界の薄型テレビ市場(09年2Q、金額ベース)では5位(シェア6.3%)と低迷、首位の韓サムスン電子(同23.9%)や2位ソニー(同12.9%)の背中は遠い。

 また、LEDテレビの成否は、シャープの液晶パネルの外販戦略をも左右する。堺工場の年間生産能力は、40型換算で1555万台まで拡大、その半分を外販へ仕向ける予定だ。

 提携先のソニー、東芝以外の外販先を確保するためにも、“堺パネル”の実力が問われている。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 浅島亮子)

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