『政と官』『政と官』
後藤田正晴 著(講談社/1994年)

 官僚としての最高位を極め、政治家に転じてからは内閣官房長官として政権を切り盛りした著者が、昨今取り沙汰されることの多い政治と官僚とのあるべき関係を説く。国民の代表である政治は政策を創造し、国民の奉仕者である官僚はその政策を実行する。

 ただ、政治は余分な責任を官僚に押し付けず、官僚が仕事をしやすいようにしなければならない。事をなすには、できる限り説得によって実現し、むやみに強権を発動したり、官僚人事に口を出したりするのは慎むべきだとくれば、耳が痛い人たちもいよう。政治家でも、官僚でも、幹部の地位にある者は、公平、公正、廉潔、そして誠実に仕事をせよ。評者は、生前の著者からこの戒めを伺い、身が引き締まる思いをした経験を持つ。

(早稲田大学公共経営大学院教授 片山善博)