JOLEDが世界で初めて商業生産した印刷用有機ELパネル写真はJOLEDが世界で初めて商業生産した印刷用有機ELパネル。本格量産には資金調達のハードルが待ち構えるが、革新機構の志賀俊之会長(左)は、追加の支援に乗り出すか Photo by Reiji Murai

ソニーとパナソニックの有機EL事業を統合したJOLED(ジェイオーレッド)の増資交渉が難航している。世界初となる「印刷方式」の有機ELの量産投資に1000億円を調達する計画だが、確保できたのは半分にも満たない額だ。その不足分の手当てが最大の課題だが、交渉の水面下の動きは混迷している。(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 村井令二)

「1000億円には全く足りていない」。JOLEDの幹部は、有機ELパネル量産のための増資計画の遅れを認めている。

 2015年に産業革新機構が75%、液晶大手のジャパンディスプレイ(JDI)が15%、ソニー5%、パナソニック5%の出資比率で発足したJOLEDは、韓国勢が先行する「蒸着方式」の有機EL技術よりも低コストで生産が可能な「印刷方式」の有機EL技術を開発する国策企業。今年7月にはJDIが手放した能美工場(石川県)を取得し、20年の本格量産を目指しているが、課題は、その設備投資に必要とされる1000億円規模の資金調達だ。

 昨年から資金集めに奔走してきたJOLEDは、6月29日付で、デンソー300億円、豊田通商100億円、住友化学50億円、装置メーカーのSCREENホールディングス20億円と4社からの出資受け入れを完了した。

 しかし、もともと17年中に総額1000億円を確保する計画だったのに対し、半年遅れでようやく470億円を調達できたというのが実態だ。残る500億円強の調達について、前出のJOLED幹部は「今年度いっぱいで残りを集めていけばいい」と強気の姿勢だが、その交渉は厳しい。

 まず、残る候補の本命は、株主であるソニーとパナソニックの追加出資だが、両社とも一度切り離した有機EL事業への再投資には消極的だ。このほか、ガラスメーカーの米コーニングとAGCも関心を示しているというが、交渉の進展は見られない。これら候補企業には、それぞれ50億円規模の出資を求めたものの、いずれも交渉は難航しているもようだ。