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改めて問う!GMのイベントリスク消滅で「世界危機」は本当に去ったのか

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第80回】 2009年6月9日
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 6月1日、77年間に亘って「世界最大の自動車メーカー」として君臨してきた米GM(ゼネラル・モーターズ)が、予測通り米国連邦破産法11条を申請し、ついに破綻した。

 すでに4月末、米国BIG3(ビッグ・スリー)の一角だったクライスラーが破綻して“予行演習”を済ませていたことに加え、米国政府が時間をかけて破綻の根回しを行なっていたことで、懸念された株式市場などへの悪影響はほとんど見られなかった。

 むしろ投資家の間には、GM破綻という不確定な“イベントリスク”が消えたことによる安心感が広まり、その後の株式市場は安定した展開を示している。

 確かに、オバマ政権の入念かつ細心の対応によって、GM破綻というイベントリスクは、実際にはかなり低減されていたと言える。しかし、それで実体経済に対する“下振れリスク”が全て払拭されたと考えるのは、適切ではない。

 中長期的にみると、この破綻によって、いくつもの“リスク・ファクター”が顕在化しているからだ。そのリスク・ファクターとは、主に3つに分けて考えるとわかり易い。

 まず1つ目は、今後の「GM再建プログラム」のなかで、従業員やディーラーの整理が進むことだ。それは、今後米国の家計を取り巻く雇用・所得環境の悪化につながる。

 2つ目は、本当にGMを再生することができるか否かだ。破産法11条を申請して再生を目指しているGMだが、仮に再生できない場合には、今度は「破産法7条=企業清算」という最終手段が待ち受けている。

 そして3つ目は、米国政府の信用力の問題だ。米国政府がGMの再生を積極的に支援するということは、事実上、政府がGMの信用を肩代わりすることに他ならない。

 果たして、米国政府の信用力はその重みに耐えられるだろうか。今後、米国政府の信用力に疑念が生じるようだと、直近では不安が薄れつつある「100年に一度の危機」が、改めて一段と現実味を帯びてくることにもなりかねない。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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