おれんじ食堂「駅マルシェ」と呼ばれる十数分間の停車時間を取っている「快速 おれんじ食堂」。沿線のグルメや特産品を買える機会もあり、車内のみならず駅舎や風景、地元の方との交流も図れるイベントが組み込まれている Photo by Shie Watanabe

今年の夏は厳しい暑さが続いたが、やっと秋の気配がするようになってきた。そして秋は観光に適した季節でもある。今回は、個人的にオススメの観光列車の鉄道旅を紹介したい。(鉄道ジャーナリスト 渡部史絵)

 最近は以前に比べ日本各地で観光列車が多く走っている。私のような者には嬉しいことだが、現実的には各鉄道会社の厳しい台所事情が垣間見られる。現在の日本はご存じのように少子高齢化が進行している。東京圏ではわずかながら人口は増えているものの、将来的には暗雲が立ち込めている。

 国土交通省HPで、東京都市圏の各路線沿線における2005年と2035年の生産年齢人口の増減(予測)が公表されている。これを見ると2035年の生産年齢人口から算出した利用者の係数は、東急田園都市線を除く全ての鉄道路線でマイナス基調に落ち込んでいる。

 この高齢化と人口減は、特に地方では深刻であり、各鉄道会社は減った旅客収入を少しでも補おうと観光列車などを走らせ、必死の努力を試みている。通常料金に加えて特別料金を徴収するケースでは必然的に、車両や施設のグレードも高く設定している。利用者に満足感を与えて、リピーターを創出する必要性があるため、非常に魅力的な列車である。

観光列車の宝庫・熊本県
オススメする列車は?

 観光列車は日本全国に存在するが、特に九州の熊本県には、「特急A列車で行こう」「特急かわせみやませみ」「SL人吉」「特急いさぶろう・しんぺい」、八代からの肥薩おれんじ鉄道には「おれんじ食堂」が、人吉からのくま川鉄道には「田園シンフォニー」が走る観光列車王国となっている(注1)

注1:「あそぼーい!」は平成28年に発生した熊本地震によって、阿蘇~大分・別府間を通年運行中。また「九州横断特急」も、阿蘇~大分・別府間を運行中のため、いずれも本文から除外した。