――どうしてそんな劇的な変化につながったのでしょうか?

松橋 一番大きな理由は、客さんの話を聞くようになったことです。それまでは、自分がしゃべるのが苦手だったこともあって、「しゃべれる営業マン」に憧れていました。ですので、セールストークばかりを一生懸命練習していました。セールスのスタート時に何を言うか、どう言えば製品の良さをアピールできるか、購入をためらっているお客さんには何を言えば効果的か、クロージング時の決め台詞はどんな言葉が最高か……。

 でも、NLPの講座に行ってから後は、ペーシングの練習のつもりだったこともあって、売ろうという気はなくなってました。だから、自分からはほとんどしゃべらず、ただひたすら、アゴを合わせてお客さんの話を聞いてました。

しゃべりたいのをグッとこらえて聞く。
そのための最初の一歩「アゴ合わせ」

――しゃべらずに聞くことで、何か違いがあったのですか?

松橋 お客さんの情報を引き出せます。それまでは、自分がしゃべる一方だったので、相手が掃除機を欲しいかどうかさえ知らずに営業していました。欲しくない相手に売ってたなんて、今思えば笑い話です。しかし、当時の僕に限らず、売れない営業マンは、みなさんそういう笑い話みたいなことをしています。

 それと、最初は欲しくないと思っているお客さんでも、いろいろ話を聞いているうちに、ペットの毛がとれないとか、子どもがお菓子のカスをこぼすとか、掃除機が役に立つ場面が生活の中にあることを教えてくれます。それがわかれば、下手に性能をアピールするより、お客さんが抱えている問題に対して「この掃除機ならキレイになりますよ」と、ピンポイントのアプローチができるようになりました。