JCBの決断、全員参加型研修を6割減らし競争力のある強い会社へ悉皆型階層別研修を6割減らし、主軸を手挙げ型研修へ。JCB人事部を改革へ踏み出させた「気づき」とは

クレジットカード大手のジェーシービー(JCB)が教育研修体系の再構築を始めている。近年、増加傾向にあった、全員参加の、いわゆる悉皆(しっかい)型階層別研修の数を6割ほど減らし、主軸を手挙げ型の研修へと切り替えた。そこには、強制的に研修に参集させ、教える体制を整えすぎると、“自立・主体・能動”といった姿勢が育ちにくくなるのではないか、という気付きがあった。同社人事部の轡田(くつわだ)裕行さんに話を聞いた。(講師ビジョン株式会社 代表取締役 島村公俊、構成/片瀬京子)

入社3年目までの若手社員を対象に
毎年1回の人事面談を実施

島村 ジェーシービー(JCB)という名前はご存知でも、社風までは分からないという方もいると思います。社内の方から見ると、JCBはどんな会社ですか。

轡田 居心地のいい会社というイメージを私は持っています。人が魅力的だった、社風がいいと感じて入社を決めたという新入社員も多いです。その理由は、社内のコミュニケーションが闊達であることでしょう。他社のことはわかりませんが、それでも、この会社は社員の仲が良く、居心地のいい会社だと思います。

島村 新入社員の育成にもその社風の良さを活かされていると思うのですが、どのようにされてきたのでしょうか?

轡田 若手の育成に関して、かなり丁寧にやってきたという自覚はあります。それには当社の特殊な事情も関係しています。多くの企業では入社後、研修期間を経て配属先が決まると思うのですが、当社の場合は4月1日、入社当日に配属が発表になります。

島村 そうですか。入社当日の配属発表なのですね。

轡田 その配属を、適当に決めるわけにはいきません。なので、入社前研修や入社前面談等を通じて、1人ひとりの価値観やキャリア志向、特性を把握し、考えぬいて配属先を決めます。また、入社後の、最初の定着の時期は非常に重要だと考えています。この時期の新入社員は会社の一部しか見ていません。それなのに「この会社は想像していたのと違う」という誤った認識で辞めていってほしくありません。