『週刊ダイヤモンド』2018年8月11・18日合併特大号の第一特集は「2018年版 決算書100本ノック!」。特集の発売に合わせた特設サイトでは過去の財務特集の人気記事や漫画などを無料で公開。今回は2018年8月11・18日号から「トヨタ/米中報復合戦の被害額は1.4兆円、保護主義シナリオを初試算」を紹介。もしトランプ米大統領が強硬姿勢を貫いたならば、自由貿易を前提に策定されたトヨタ自動車の戦略は大幅に狂う。本誌では、米保護主義がトヨタに及ぼす負の影響を初めて試算した。(掲載される数字や情報は全て雑誌発売時点のもの)

 米中による関税報復合戦は、通商戦争にとどまらず、将来の飯の種を競う「ハイテク覇権争奪戦」へ発展し、戦況は激化する一方だ。

 米中が覇権獲得の対象に据える代表格が、自動車である。生産・販売を米中に依存する日本の自動車産業にとっても、この貿易戦争は対岸の火事ではない。

 しかし、どうも当事者の危機感は薄い。日本の自動車・自動車部品の上場銘柄100社強のうち、2017年度通期決算時点で業績予想に米国関税リスクを織り込んだのは、住友理工1社だけだ。ある自動車メーカー幹部も、「米中両国が受ける負の影響を考えれば収束するはず。生産計画の修正は考えていない」と言い切る。

 だが、「それは希望的観測。下手に不満を声高に叫べば、トランプ大統領の標的になる。大事に至らぬよう鳴りを潜めている」(別の日系メーカー幹部)のが実情だ。

 では、日系メーカーの業績へのインパクトはどの程度なのか。トヨタ自動車を例に取ると、その深刻さが手に取るように分かる。

 トランプが、従来通り「自由貿易主義」を志向した場合と、「保護主義」を強硬に貫いた場合の二つのシナリオを想定した。東海東京調査センターの杉浦誠司・シニアアナリストに、シナリオ別の「2024年3月期」の財務諸表を試算してもらった。米国の保護主義が強まると、トヨタは生産、販売、開発など多方面に及ぶ対策を連動して進めなければならなくなる。