日本語でも悩むメールがスラスラ書ける!総合商社で磨き抜かれた「生きた英語」とは?
「値下げ要求をスマートに断りたい」「代金の未払いをやんわりと伝えたい」「商品をさりげなく売り込みたい」。あなたならどう書きますか?
三井物産の商社マンとして、約40年間、第一線で活躍し、退職後は慶應義塾大学、早稲田大学のビジネススクールで教鞭をとる定森氏の新刊、『人を動かす英文ビジネスEメールの書き方ー信頼と尊敬を勝ちとる「プロの気くばり」』から、内容の一部を特別公開する。

英語の「クレーム対応」、トラブルゼロの秘訣

日本語でも難しいクレーム処理。英語だと?

 今日のテーマは、「顧客からのクレームを拒否する」です。

 顧客からの苦情には、可能な限り顧客の立場や主張を尊重するのが原則です。しかしときには、要求の正当性が認められない場合もあり得ます。顧客の希望に沿えないメッセージを送るときの「気くばり」は、相手の感情面と理性面の両方を重視した説明を心がけることです。

 さっそく例を見てみましょう。

Subject: Return request
(件名:返品依頼)
Dear Mr. Anderson, Your claim with regard to the performance of our testing equipment has been given thorough consideration here.
(アンダーソン様、貴社ご注文の弊社製検査機器の性能にかかわるクレームについて、弊社にて徹底した検証を行いました。)
While we regret your dissatisfaction with our product, the results of our careful investigation do not support your claim.
(貴社が弊社の検査機器にご満足いただけないのは残念ですが、弊社で入念に精査しましたものの、貴社のクレームを裏付ける根拠は見つかりませんでした。)
Consequently, we are not prepared to accept the equipment if returned and will have no alternative but to insist on payment of the contracted amount.
(従いまして、この商品を返却されたとしても代金のご返金要求には応じかねますので、契約通りの金額のお支払いをお願いせざるを得ません。)
We would be happy to continue to cooperate in any way we can in facilitating the utility of the testing equipment. Yours sincerely,
(弊社は、今後とも本検査機器の性能を十分にご活用いただけるよう全力で協力させていただく所存です。)

 さて、メールのポイントを見てみましょう。

 まず、「顧客が主張する機器の性能は徹底検証した」「徹底検証の結果、顧客のクレームを裏づける材料が得られなかった」「売買契約に照らして返品事由には当たらず、代金の返金には応じられない」という事実を理詰めで説明します。そのうえで、「今後、機器の活用法に関する相談やアドバイスなど全力で協力する」という、顧客に寄り添ったサポート態勢を提示し、顧客の感情面に訴えましょう。

 続いて、英語表現のポイントを見ていきます。

 has been given thorough consideration hereは、「徹底した検証を行ってきた」の意味です。While we regret your dissatisfaction with our product のwhileはalthoughと同じ意味で、この節で表現する内容や気持ちとは反対の事実や決定が続く場合に使われます。相手をがっかりさせるメッセージを伝える際、その気持ちを幾分でも和らげる「気くばり」表現です。

 do not support your claimは、「あなたのクレーム(主張・請求)を正当化する根拠がない」という意味です。日本語の「苦情」に当たる英語としてclaimやcomplaintが使われますが、両者は意味合いが異なります。claimは、何かを根拠に「主張する」「請求する」「要求する」ことを意味します。それに対して、complaint は、「不平、不満、文句を言う」ことを意味します。

 we are not prepared to accept the equipmentの後のif returnedは、否定的な意味で使われていますので、「返却されたら」ではなく「返却されたとしても」の意味です。have no alternative but to ~は、「~以外の選択肢がない」「~せざるを得ない」という意味です。

参考記事:ネイティブにイエスと言わせる「商社の英語」、日本人の「気くばり」が、武器になる。