倉井敏磨(三菱ガス化学  代表取締役社長 )Photo by Shinichi Yokoyama

“三菱”を冠する化学メーカーが数ある中で、一社だけ系統の異なる企業がある。巨大組織である三菱ケミカルホールディングスとよく似た社名の三菱ガス化学は、国内の化学業界で最も早く、約40年も前から中東のサウジアラビアで合弁事業を開始するなど、独自の路線を歩んできた。地味な存在であることを自認しながらも、「自社で開発した技術が90%以上」と胸を張る倉井敏磨社長に、ベーシックな問題意識を聞いた。 (聞き手/「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)

――海外でビジネスを行っている企業にとって、世界を巻き込む現在進行中の「米中貿易摩擦」の影響は懸念材料ですが、日本の化学メーカーにはイランの核開発問題を理由にして米国が再開した「イラン産原油・天然ガスの禁輸」も心配の種ではないですか。

 当社は、1980年から中東のサウジアラビア、92年から南米のベネズエラ、2006年から東南アジアのブルネイで、天然ガスからメタノール(基礎化学品の一種)などを取り出す現地生産に乗り出している。メタノールは、防腐処理などで使われるホルマリンでの用途がよく知られていますが、身近なところではアクリル樹脂や化粧品、医薬品、農薬などの原料になるものです。

 19年の春からは、4番目の拠点として、カリブ海に浮かぶ島トリニダード・トバゴでもメタノールを生産する計画を進めている。現時点では、(1)相対的に安価な天然ガスを入手できる、(2)効率的な生産プロセスを持っている、(3)地球規模でロジスティクス(物流網)を整備している。従って、今回のイラン産原油・天然ガスの禁輸における直接的な影響はありません。