“すごい”と”やばい”の両面から、日本史の偉人たちに迫る『東大教授がおしえる やばい日本史』が話題になっている。発売後、即5万部の重版がかかり、Amazonの日本史和書ランキングでも1位に躍り出た。
児童書として作られた本書だが、ビジネス街の書店で大人にも買われているという。本書の監修を担当した、東京大学史料編纂所教授の本郷和人さんは「“すごい”と“やばい”の両面を知らなければ、歴史を知ったことにはなりません。そして歴史にはいろいろな側面があるのです」と語る。
(聞き手:滝乃みわこ)

もし家康と秀吉が
天下をとる順番が逆だったら?

権力を手に入れた後、大成功したのが徳川家康だ。家康のひらいた江戸幕府は264年も続き、徳川家は絶対的な権力者として幕末まで君臨した。家康には、信長や秀吉にはない、リーダーとしての並外れた優れた能力があったのだろうか? 東京大学史料編纂所教授の本郷和人さんに聞いた。

徳川家康の「成功」の鍵は、何だったのか?「やばい」から日本の歴史が見えてくる「たぬきオヤジ」とも呼ばれた徳川家康

僕は、人物が歴史を作る場合と、歴史が人物を選ぶ場合があると考えています。

 たとえばモンゴル帝国の皇帝チンギス・ハンは中国からヨーロッパまで、世界一広い土地を征服しましたが、そのときのモンゴル人の人口は何人だったかご存知ですか? ちなみに日本の人口が1000万人だった時代です。

 答えは、たった90万人。今の香川県の人口(96万人)より、ちょっと少ないくらいです。そんな少人数で世界史上最大の領土を征服するなんて、チンギス・ハンという並外れたリーダーがいなければ無理というものでしょう。これは人物が歴史を作ったといえます。

 では、もし信長の死後、秀吉ではなく家康が先に天下人になっていたら?

 秀吉が家臣たちの支持を失った最大の原因は朝鮮出兵というムチャぶりでしたが、家康ならそんなことはしなかったのかというと、僕は家康も朝鮮出兵を命じたかもしれないと考えます」