コア業務を強化する
攻めのBPOへ

 BPOの対象業務は、人事・総務・経理などの支援業務から物流、購買、マーケティングなどの直接業務まで、非常に多岐にわたる。その効果としては、業務プロセスの最適化による効率化やコスト削減はもちろん、コア業務への集中、人材資源の最適配置、付加価値の創造などが挙げられる。

 浅利氏は、大企業ほど全社レベルでの調達/購買プロセスを最適化するBPOが有効に働きやすいという。事業部門や拠点ごとに分散していた調達業務を統合すれば、スケールメリットやバイイング・パワーをもって交渉できるため、コストの大幅な圧縮が期待できるからだ。

 現在のところ業種別に見てデジタルを活用したBPO活用が際立って高いのは製造業と建設・不動産業である。これらはスマートファクトリーやスマートシティー/スマートビルディングをはじめとするデジタライゼーションへの対応が急務となっている。

 スマートファクトリーとは、工場内のあらゆる機器をIoT化して収集したさまざまなデータを分析し、最適な生産を行うための取り組みのこと。「集めたデータを分析して生産効率の最適化や高品質な製品作りを実現するには、データサイエンスに通じた専門家が必要。BPOでその人材不足をカバーできるというメリットもあります」(浅利氏)。

 また、こんな動きも。「従来の経理や総務など、どちらかというとコスト削減を中心とした守りのBPOだけではなく、コア業務への集中や新規性の高いデジタルビジネスを推進する優秀な人材の確保などを目的とした攻めのBPOも増えています。デジタル技術によって変革を起こしていける専門家は不足気味ですから、今後はイノベーションを起こせるようなBPOも広がっていくでしょう」(浅利氏)。

中長期的な視点から
BPO活用を検討すべき

 デジタルを活用したBPOに大きなメリットがあることは疑いようもないが、新規導入の可能性を従業員規模別で見ると、大企業よりも1000人以上5000人未満クラスの企業の方が高いことがITRの調査で分かった。なぜ大企業はBPOの新規導入に積極的ではないのか。

「当社の最新のBPO調査によると、『業務が複雑だから』という理由が多かったですね。業務の標準化が難しいため、そのままBPOに移行させると逆にコスト高になってしまうのでしょう。業務の複雑化は、安価なRPAの場当たり的な導入で助長されることもあるので注意が必要となります」(浅利氏)

 その背景には、“従業員の雇用を守る"という日本企業特有の事情もあるだろう。米国のように従業員をリストラしてBPOに切り替えるといったドラスチックな効率化には踏み切れないのが日本の企業だ。この問題をどう解決すべきなのか。

「リストラしないのであれば、例えば従業員を再教育して別の業務にシフトさせるといった対応が必要です。従って、自社の今後の事業展開やデジタル化への対応を踏まえつつ、中長期的な視点で人材やスキルのリソースをどう調達し配分していくかを見極め、計画的にBPOを導入していくことが重要です」

 企業の競争力をより高めていくためには、以上のことを踏まえた上で、守りと攻めの両面においてBPOをうまく活用していくべきだろう。