第2部
シンプルな画面で入力のストレスをなくした
従業員のコンディション可視化ツール

第1部では、「人を大切にする経営」の第一歩として、「従業員の気持ちを知ること」の重要性が指摘されたが、そのための方法はさまざまだ。坂本氏が挙げた意識調査と面談というのもその一つだが、できるだけ負担をかけずに、社員の本音を引き出す工夫が求められる。また、その結果を見た人事部などができるだけ素早く対処できるような仕組みも必要だ。

シンプルだから高回答率
全体を把握しやすい

 第1部で、「人を大切にする経営」を実践するためのアプローチを述べた。現実にそのための施策を実行する上で非常に役立つのが、従業員のコンディション変化発見ツール「Geppo(ゲッポウ)」である。Geppoを提供しているのは、ヒューマンキャピタルテクノロジーというHRテクノロジーカンパニー。リクルートとサイバーエージェントの合弁により、2017年7月に設立された。同社取締役の渡邊大介氏はGeppoについてこう説明する。

「いわば、従業員の主観的なコンディションを把握するためのツールです。従業員は月1回、簡単な質問に答えるだけ。これを集計・分析した上で、グラフなどにまとめた結果を経営層や人事部門はダッシュボードで確認することができます。職場の状態を素早く把握した上で、経営や組織に関する施策、適材適所の推進、職場の環境改善などに役立てることができます」

Geppoの回答画面(上)。基本三つの質問に対して、「快晴」から「雨」までの五つのアイコンから一つを選ぶだけというシンプルな構成になっている。管理者画面(下)では、社員の回答状況に加えて、「雨」の回答が続いている社員がいるとアラートが出る形になっている
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 第1部で坂本氏が経営者にとって最も重要なこととして挙げていたのが、「従業員がどんな気持ちで日々働いているのかを知る」ということ。それが、Geppoを使えばより簡単に実現することができるのだ。

 従業員はPCやスマートフォン、フィーチャーフォンなど多様な端末からGeppoにアクセスできる。設問は基本三つ。Q1は仕事満足度、Q2は人間関係、Q3は健康状態に関する質問で、「快晴」から「雨」までの五つのアイコンから一つを選ぶだけだ。時期などを見てQ4として適切な質問を加えることもできる。さらに、フリーコメント欄も用意されている。このシンプルさが、Geppoの大きな特長だ。

「従業員満足度などの調査について、『回答するだけで大きな負荷がかかる』という声をよく聞きます。これでは回答率が上がらず、全体の状況をつかみにくい。そこで、Geppoは入力しやすさにフォーカスしました。設問を少なくしたほか、入力画面のデザインなども工夫しています」と渡邊氏は言う。

 17年にリリースされたGeppoは、すでに数万人の従業員に利用されており、全体の回答率は9割近い。同社の狙い通り、ストレスのない入力が実現されているといえるだろう。