同じ内容を伝えるにしても、魅力のある書き方ができれば、伝わり方も変わってきます。ここでは、さまざまな表現方法を使い分けることを学んでいきましょう。
「うまく書けない」「時間がかかる」「何が言いたいかわからないと言われてしまう」――そんな悩みを解消する書き方を新刊『人一倍時間がかかる人のためのすぐ書ける文章術 ムダのない大人の文章が書ける』から紹介していきます。

その文章、ワンパターンになっていませんか?

問題:□の空欄を埋めてみよう
頑張った
→ 全力を□□□□   
→ 力を□□だ
→ 最後まで□□□   
→ □□に取り組んだ

 一つの文章の中に、何度も同じ表現が出てくると、ワンパターンで下手な文章に見えます。単調で退屈な文章になったり、くどくてしつこい印象を与えたりしてしまうのです。

 たとえば、文末。「~ます」「~ます」というように、同じ文末ばかりが続いてしまうと、文章のリズムがよくありません。

書店には定期的に足を運びます。ベストセラーを確認します。買わなくても表紙や帯を眺めます。本のタイトルやデザインに加え、帯に推薦文を書いているのは誰か、帯ではどういった点をアピールしているかなども観察します。その時々のトレンドがよく表れています

よりも

書店には定期的に足を運びます。ベストセラーを確認したいからです。買わなくても表紙や帯を眺めます。見ているのは、本のタイトルやデザインだけではありません。帯に推薦文を書いているのは誰か、帯ではどういった点をアピールしているかなども観察するのです。その時々のトレンドがよく表れています

 とするほうが読みやすいのです。試しに音読してみると、よくわかります。

 文末表現以外でも、同じ表現が続くのは考えものです。「頑張った」というエピソードを書くにしても、「頑張った」「頑張った」と連発すると、鬱陶(うっとう)しく感じられます。

 冒頭の穴埋め問題ですが、「全力を尽くした」のように、最大限のエネルギーを費やしたことを強調する言い方もあれば、「力を注いだ」のように、一つのことに集中したことを訴える言い方もあります。諦めずに「最後まで粘った」こと、あるいは、コツコツと「地道に取り組んだ」ことをアピールするような表現もできるのです。

 同じ言葉が続きそうになったら、2回目以降、置き換えられる言葉がないか、検討しましょう。

 読み返してみて、段落やページの中で同じ言葉を連発していた場合は、それぞれの文脈で最も適した言葉がないか考えてみてください。「頑張った」と「努力した」のように、訓読みの表現から音読みの漢語に変える手も使えます。

 自分では思い付かない場合には、「Weblio類語辞典」などの類語辞典を活用するといいでしょう。ウェブ上の類語辞典のほうが検索しやすく便利です。

 ワンパターンという課題に関しては、もう一つ、人は油断すると陳腐な常套句(じょうとうく)を使ってしまうという問題があります。

 以前、インターネット上で「J-POPは翼広げすぎ」という話題が盛り上がったことがあります。

・桜舞いすぎ
・瞳閉じすぎ
・君の名を呼びすぎ
・もう一人じゃなさすぎ

 などと、J-POPの歌詞に頻繁に登場するフレーズがからかいの対象になったのです。

 テレビや雑誌にも、ありきたりの常套句があふれています。「SNSで話題」「必見」「衝撃の展開」「奇跡の△歳」「まさかの……」などの煽(あお)り文句。もはや同じようなフレーズを何度も目にして慣れてしまっているので、「SNSで話題なの? チェックしなきゃ」「必見なの? 見なきゃ」などとはならないですよね。

 大げさな言葉で煽る常套句は陳腐に見えやすいので、使わない、と心得ましょう。