トランプ大統領は就任以来、幾度となく米国の貿易赤字に対する不満を述べており、その矛先は日本企業にも向けられた。では、それは「海外の安価な労働力」と「米国民の浪費癖」によって生じているという説は本当なのだろうか。経営学者のロジャー・マーティンはそれを否定し、マクロ経済の原理と歴史的背景を概説する。


「我が国は毎年8000億ドルもの貿易赤字を出している」。トランプ大統領は2018年3月に新たな関税計画を発表した際、米国の財貿易赤字の規模についてこう述べた。また、「それにより我が国の仕事と富は、他の国々に奪われている」とツイートし、貿易赤字について繰り返し不満を露わにしている。

 それを機に発生した数々の貿易紛争は、1930年に制定されたスムート・ホーリー法が引き起こしたような、全面戦争につながるおそれがある。この関税法は大恐慌を招いた、または深刻化させた原因であると広く信じられている。