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ユニクロが全店舗で採用した「G Suite」とは何か
Googleの開発トップに聞く

末岡洋子
2018年10月3日
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 一方のファーストリテイリングは、「有明プロジェクト」として、2年前より新しいアパレルを目指した取り組みを進めているが、ここでクラウド、そしてG Suiteは大きな役割を担う。柳井氏は発表の席で、「今後はお客様と一緒に服を作って行く時代。顧客ニーズが全てだ。それぞれの人にとって最適な服は何かに答える。これをGoogleと一緒にやっていきたい」と述べた。Googleを選んだ理由については、「Googleは検索、人工知能などでナンバー1。ロボティクス、自動運転などの取り組みも進めている」「顧客情報、社員の情報、取引先情報など世界中の情報を集め、必要としている人が適所で最適な判断をするにはクラウドで情報を一元化する必要がある。そこでG Suiteを選んだ」と述べた。

 ラガバン氏は「私の予想だが」と前置きした上で、ファーストリテイリング導入の背景に、情報の流れを高速にしたいという狙いがあるとみる。「これまでの小売業のオペレーションは、本社があり、店舗があり、店舗にいる営業スタッフや販売員が何が売れているのか、売れていないのかを紙に記録するというもの。この情報が収集され、意思決定できる人(本社)の元に行くまでに時間がかかる」とラガバン氏、クラウドを導入することで、貴重な情報を最前線から意思決定者に高速に伝えることができる。リアルタイムに情報を得たマネージャーは、デザインを変更する、供給を調整するなどの対策を迅速に取ることができる。「このサイクルをいかに高速に回すか。G Suiteを導入した顧客に望む最高の成果は、リアクションまでのサイクル短縮だ」(ラガバン氏)。

現場と経営の情報共有がリアルタイムに進む

 例えば店舗スタッフがスマートフォンを使って在庫の状況、ディスプレーなどを写真に撮って送るだけで、情報の共有がスピード化できる。これまで小売では、コンピューターはバックオフィスにしかなかった。だが、小型で多機能、かつ常時接続の端末とツールが全員の手に渡ることは大きな変化につながる。

 ラガバン氏は例として、フランスの小売大手Auchanの例をあげた。最前線のストアスタッフからバックエンドへの情報の流れを高速化することを目的にG Suiteを導入、CEOが全社員にメッセージを伝えるという使い方もあれば、ストアマネージャーたちはチャットを利用して気になることやトレンドを日常的に共有しているという。例えば、“今日はこんな製品が売れている”とある店舗のマネージャーが書けば、別のストアから“X日までイベントがある”と教えてくれる。であれば、在庫を増やそう、と迅速な判断に役立っているという。

 柳井氏も会見の席で、「世界に3400店舗があるが、情報が全世界の人に伝わっていない。Googleと最適な在庫などについて研究していきたい」と述べた。「我々は全世界で13億点ほどの商品を製造している。生産、物流、販売を全て最適化するにはコンピュータは不可欠。これにビックデータ、AI、ロボティクスなどが入ることで、これまで3日かかっていたような作業が、ひょっとして10分になるかも」と期待を寄せた(ファーストリテイリングはGoogleとの提携の一環として、Googleが日本でも提供を開始する機械学習活用のためのサービス「Advanced Solution Lab(ASL)」を利用することも明らかにしている)。

 Googleは、さらなる高速のために機械学習の取り込みを進めている。例えばGmailでは、受け取ったメールに対する返信文言を提案してくれる機能が加わっている。「了解です」などと一言で良い場合も多い。すでに10%のユーザーが使っているという。カレンダーでも、参加者のスケジュールだけでなく、位置情報、会議室の広さなど包括的に分析して最適な時間の候補を割り出す。このような機械学習の取り込みは今後さらに進めていく。「作業時間のうちクリエイティブな作業にあてている時間はわずか5%程度。ドキュメントを探したり、メールに返信したり、スケジュールを確認したり、クリエイティブではないことにたくさんの時間を費やしている」とラガバン氏。古くはスパムメールの自動判定から、探しているファイルを予想する機能など、機械ができることは格段に増えているという。

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末岡洋子

すえおか・ようこ/フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている。

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