カテゴリー・イノベーションを
成功させるMDBD

  一方、本格的なカテゴリー・イノベーションを生み出す方法論として、電通グループが提唱するのはMDBD(マーケティング・ドリブン・ビジネス・デザイン)という手法だ。

及川直彦
電通コンサルティング
ディレクター
代表取締役社長

  電通コンサルティングのディレクター・及川直彦代表取締役社長は、「MDBDとは、自社の強みや資源から発想するのではなく、マーケットに存在する『声』からアイデアを着想し、マーケットとの対話を通じて洗練させる事業開発手法のこと。提供価値を創造するためには、まず“ニーズの芽”に気付くことが重要なポイントになります」と説明する。

  自社が持つシーズ(技術)を前に、腕組みをして顧客を探すという方法では、カテゴリー・イノベーションは生み出せない。新規事業開発でよく失敗するのは、自社に既にある製品やサービスが貢献できる範囲内で、顧客ニーズを考えてしまうからだ。

「“ニーズの芽”に気付くためには、先入観にとらわれない調査や分析、『意思』を持って物事の“芽”を見ることが大切になります。例えば、“買い物弱者”と言うと“買い物に不便な土地に住んでいる人”ととらえがちだが、実はこの条件に当てはまらないグループがある。このグループを分析することで、見逃されていた“ニーズの芽”が見えてきた」と及川氏は言う。

  会議室でつくり上げられる架空の顧客のイメージではなく、マーケットに実在する“ニーズの芽”に気付くことで、本格的なカテゴリー・イノベーションが誕生するのだ。

  カテゴリー・イノベーションの考え方は、海外で事業を展開させたいと考えている企業にとっても有益な手段となる。