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連載経済小説 東京崩壊
【第24回】 2012年5月9日
著者・コラム紹介バックナンバー
高嶋哲夫 [作家]

植田からの誘い

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第2章

9

 国交省庁舎前についたときには10時近くになっていた。

 すでに電気は来ているにもかかわらず、明かりは半分ほどが消されている。

 「森嶋さんじゃないですか」

 入口を入って廊下を歩き始めたとき、背後から声をかけられた。

 振り向くと植田が立っている。

 「まだ仕事ですか」

 「ちょっと出かけてました。いま帰ったところです。植田さんこそ、こんな時間まで役所に用ですか」

 この時期なので、庁舎内にはまだ半数以上の人が残っているし、泊まり込んでいる者も多い。しかし政治家はいないだろう。大臣や副大臣、政務次官がいるとも思えない。彼らは、議員会館にいる時間の方が遥かに長い。

 植田は森嶋の問いには答えず、一瞬考えるようなそぶりを見せた。

 「一緒に来てくれないか。きみにとっても悪い話じゃない。いや、むしろ重要なことだ」

 植田の顔には今まで見せたことのない、何かを訴えるような表情が浮かんでいる。

 森嶋は思わず頷いていた。

 森嶋は植田のあとについて、たった今通ったばかりのセキュリティを戻っていった。

 役所を出てからタクシーに乗った。

 植田は運転席に身体を乗り出すようにして行き先を告げている。

 「どこに行くんですか」

 「まあ、行けば分かります」

 植田は曖昧な返事をして前方を見つめている。

 森嶋もそれ以上、聞く気になれなかった。夜の街を15分ほど走り、付いて来たことを後悔し始めたころ、タクシーは止まった。

 

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高嶋哲夫 [作家]

1949年、岡山県玉野市生まれ。1969年、慶應義塾大学工学部に入学。1973年、同大学院修士課程へ。在学中、通産省(当時)の電子技術総合研究所で核融合研究を行う。1975年、同大学院修了。日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)研究員。1977年、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)へ留学。1981年、帰国。
1990年、『帰国』で第24回北日本文学賞、1994年、『メルトダウン』で第1回小説現代推理新人賞、1999年、『イントゥルーダー』で第16回サントリーミステリー大賞で大賞・読者賞など受賞多数。
日本推理作家協会、日本文芸家協会、日本文芸家クラブ会員。全国学習塾協同組合理事。原子力研究開発機構では外部広報委員長を務める。


連載経済小説 東京崩壊

この国に住み続ける限り、巨大地震は必ずくる。もし巨大地震が東京を襲ったら、首都機能は完全に麻痺し、政治と経済がストップ。その損失額は110兆円にもおよび、日本発の世界恐慌にまで至るかもしれない――。今後、日本が取るべき道は何か。その答えを探る連載経済小説。

「連載経済小説 東京崩壊」

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