トランプ大統領と安倍首相首脳会談で「タッグを組む」姿勢を演出したトランプ大統領と安倍首相だが、日本政府には今後、厳しい通商交渉が待ち受ける Photo:AFP/アフロ

日米首脳会談で交渉開始に合意した日米物品貿易協定(TAG)。自動車関税引き上げはいったん回避されたが、これから重要な政治日程をこなす安倍政権としては、むしろ内政と対米通商交渉との間で難局を迎えるシナリオが現実味を帯びてきた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 竹田幸平)

「日本側に今後、打撃を与えかねない“爆弾”を仕掛けられてしまった」。9月26日の日米首脳会談後、7項目での合意事項を示す形で発表された日米共同声明の内容をめぐり、通商政策に詳しいみずほ総合研究所の菅原淳一主席研究員は懸念を示す。

 なぜなら、両国が交渉の開始に合意した日米物品貿易協定(TAG、Trade Agreement on goods)での米政府の立場を示す「交渉結果が米国の自動車産業の製造および雇用の増加を目指すものであること」という一節が盛り込まれたからだ。

 つまり、米国が日本車の輸入数量規制や米国内の投資拡大などを求める余地が残ったことで、安倍政権はこの先、内政と対米通商交渉との間でジレンマを抱える可能性が高まってきたといえる。

 確かに、首脳会談の合意内容は一見、耳慣れない協定の略称さながら両国が友好的に「タッグを組んだ」かのように、安倍晋三首相とトランプ米大統領がそれぞれ一定の成果を自国内で訴えやすい方向へとまとまっている。