日本にも「氷河期世代」という言葉があるように、大卒者の就職状況は景気の波に大きく左右される。ある研究によると、不況時に大学を卒業して就職した人は、その後の給与やキャリアの進展で不利を被っているという。その反面、仕事に対する満足度や倫理意識は高いというポジティブな結果も見られた。なぜだろうか。


 2009年、2010年、2011年の米大学卒業生が求人市場に参入した際、就職の見込みは惨憺たるものであった。失業率は歴史的な高さで、就職口は不足していた。2010年の卒業生で、卒業から9ヵ月後に就職していたのは、たった56%である。職を見つけた人でも、その仕事は臨時雇用であったり、福利厚生がなかったり、あるいは大学の学位を必要としないものも多かった。

 キャリア初期のこうした体験は、その後のキャリア進展にマイナスの影響を及ぼし続けるようだ。たとえば、不況時に卒業した人は、景気がもっとよい時分に卒業した人に比べ、10年以上を経たのちも収入が少ない。また、勤務先はより小規模で、知名度も給与もより低い傾向にある。

 同様のパターンは、会社人生の頂点に達した人々、つまりCEOの間でも見られる。不況時に卒業してCEOになる人は往々にして、もっと好況時にキャリアを開始した人に比べ、より小規模で知名度も低い企業を経営している。

 不況が、給与と職業的名声にマイナスの影響を継続的に及ぼすことは、ほぼ間違いない。だが、職業生活のその他の側面については、驚くほどプラスの意味を持つようである。