広島東洋カープ優勝パレード広島東洋カープの優勝パレードで沿道に手を振る選手たち Photo:PIXTA

プロ野球セントラルリーグのクライマックスシリーズはいよいよファイナルステージを迎え、2年ぶりの日本シリーズ進出を狙う広島東洋カープが登場します。そんなカープは、2位のチームと圧倒的なゲーム差をつけてレギュラーシーズンで3連覇を果たしました。一方、2018年度のカープの年俸総額は12球団中6位で、1位の福岡ソフトバンクホークスの半分以下と決して高いわけではありません。一人ひとりの力を最大限に引き出すカープのチームづくりは、まさにこれからの組織マネジメントのヒントになります。『人事こそ最強の経営戦略』の著者であり人事戦略コンサルティングの第一人者・南和気氏が、人事が事業を支える企業を紹介していきます。今回は広島東洋カープを取り上げます。

FA補強を全くしないカープが
セントラルリーグ3連覇

 9月26日、プロ野球セントラルリーグは、広島東洋カープ(以下、カープ)が優勝し、見事3連覇を成し遂げました。しかも、4月下旬に首位に立ってから一度もその座を明け渡すことなく最後まで独走を続け、まさに圧倒的強さを見せつけています。

 今でこそカープは、“カープ女子”という言葉が生まれたように若い女性からも注目されるほどの人気球団となり、球場のチケット入手も困難なほどですが、もともと常勝軍団だったわけではありません。2016年シーズンの優勝は実に25年ぶりで、1年前の2015年シーズンは首位と6.5ゲーム差をつけられた4位に終わっていたチームでした。

 しかも、カープは伝統的にFA(フリーエージェント)制度による選手獲得には消極的で、FA制度が始まった93年以来、1人の選手も獲得していません(最も獲得しているのは読売ジャイアンツの24人)。

 さらに2015年のオフには、エースの前田健太投手がメジャーリーグに移籍、加えてチームの精神的な支柱とも言われた黒田博樹投手も同じく2016年オフに引退といったように、中心となる選手が次々とチームを離れていきました。そんななかでの3連覇なのです。

 いわば、「中途採用に消極的な歴史ある日本企業が、エース中のエースである営業本部長の退職、長らく精神的な象徴として支えてきた役員も定年退職を迎えたなか、25年ぶりにシェア1位を獲得し、それを3年連続維持するという快挙を成し遂げた状態」と言い換えられるでしょう。