さて大反響のあったマーケティング業界の「8つの流派」。残りの4つも一挙公開! 新刊『マーケティングの仕事と年収のリアル』から、マーケティング職の方はもちろん、より広い職種の方にも通じるテーマや関連する対談をお送りする本連載。前回から2回にわたり、仕事のスタイルや判断基準が異なるマーケティング業界の「8つの流派」を紹介しています。流派のクセを知れば、上司や交渉先とのコミュニケーションに活かせるうえ、自分と会社の相性も見極められます。さて、あなたやあなたの上司はどの流派?(イラスト:ひらのんさ)

 マーケティングの4P施策(「Product(製品)」「Promotion(購買喚起)」「Place(販売チャネル)」「Price(価格)」)は、事業会社の中で、多様な部門が連携して成り立っています。また、それぞれの業務に対して、外部から専門的な機能でサポートする支援会社が存在します。どの部門の業務までがマーケティングの範疇かという意識は、会社によって千差万別です。

 一口にマーケティング業界といっても、仕事のやり方や判断のスタイルは、会社の文化やチームの責任者によって大きく異なる「流派」のようなものが存在します。自分がどの流派をめざすのかで最適な会社は異なりますし、自分が仕事で関わる人々がどのような流派かを見極めておくと、相手の言動が理解できずにストレスを感じることも減るでしょう。

 前回から2回にわたって、私の独断と偏見で整理した、マーケティング職の「8つの流派」について解説しています。今回は流派4から流派8まで。

 ちなみに他流派からの評価として「◯◯と思われがち」というネガティブな目線も紹介していますが、これらは各流派の中でも段位が低い人(!)が与えやすい印象です。どの流派でも、レベルを究めていくと、自身のもつ思考特性や強みだけでなく、その弊害や弱点もわかってきます。このため上段者は、状況に合わせて多くの流派を使い分けたり、異なる流派と協働できる柔軟性をもっています。各流派の欠点を感じさせない人は、相当に経験を積んだ段位の高い人といえるでしょう。

マーケティング業界に存在する8つの流派<後編>

「8つの流派」を知らずして、マーケティング業界は語れない!各流派の欠点を感じさせる人は「段位が低い」?!「ベストプラクティスはないの?」

【流派5】戦略フレームワーク重視派
口癖「ベストプラクティスはないの?」

■価値判断:戦略セオリーや成功事例を重視し、個人の思いつきアイデアに懐疑的な傾向。

■個人特性:ロジカルな考え方に長けていて、良くも悪くも要領よく理解し、こなそうとする人も。

■他流派からの評価:「話の抽象度が高く、もっと具体的アイデアを出してほしい」「成果にしか関心がなく、ブランドに愛情がない」「損得勘定で政治的に立ち回る」など、自意識が高すぎると思われがち。

■生息地:コンサルティングファームやMBA出身者に多い。

「8つの流派」を知らずして、マーケティング業界は語れない!各流派の欠点を感じさせる人は「段位が低い」?!「最近、海外ではこういう新しいやり方してるんだよ」

【流派6】トレンド施策追いかけ派
口癖「最近、海外ではこういう新しいやり方してるんだよ」

■価値判断:業界メディアで話題の施策やバズワードに関心が高く、昔からの施策に関心が薄い。

■個人特性:純粋にマーケが好きで、業界メディアチェックやセミナー受講が趣味化した人も。

■他流派からの評価:「新手法を使うことが目的化してる」「本やセミナーでよく勉強してるけど、仕事に活かせてるの?」「目新しい施策はいいけど、本当に投資回収できるの?」と、懸念をもたれがち。

■生息地:事業会社、支援会社どちらにも年齢に偏りなく存在。

「8つの流派」を知らずして、マーケティング業界は語れない!各流派の欠点を感じさせる人は「段位が低い」?!「○○教授の研究によると……」

【流派7】真理にこだわるアカデミック派
口癖「◯◯教授の研究によると・・・」

■価値判断:再現性ある真理・法則を重視し、個人の思いつきや経験則には少し懐疑的な傾向。

■個人特性:新しい知識習得に前向きで、海外のカンファレンスや論文をいち早くインプット。目先の経済的利益にとらわれず、自分の知識によって社会・業界・人に貢献することを喜びとする人も。

■他流派からの評価:「言葉の定義や出典にうるさいから会話で気を使う」「言っていることは正しいかもしれないけど、本当に成果でるの?」などと鬱陶しがられがち。

■生息地:大学院の出身者に多い(事業会社/支援会社問わず)。

「8つの流派」を知らずして、マーケティング業界は語れない!各流派の欠点を感じさせる人は「段位が低い」?!「実際にやったらこれが売れたので信じてください!」

【流派8】とにかく実践知のストリートファイト派
口癖「実際にやったらこれが売れたので信じてください!」

■価値判断:自分で実践してきた経験知を重視し、小難しい用語や概念を嫌う傾向。

■個人特性:まずは自分で体験行動してみる。その感想とともに、気に入ったものは積極的に推奨し、楽しいことや幸せな気持ちをシェアすることを喜びとする人も。

■他流派からの評価:「話が面白くて興味深いけど、そのままでは上司の説得は難しそう」「自分の経験と今回のテーマでは前提条件が違うのでは?」などと、困惑されがち。

■生息地:独立フリーランス~小規模な支援会社のプレイヤーに多い(事業会社出身者も多い)。

 さて、いかがでしたか? 個人や起業の特性は、こうした流派だけでなく、事業の導入期~成長期~成熟期のどのステージに強いタイプかによっても分かれているものです。そうした事業ライフサイクルに応じた適性の見極め方については、また別の機会にご紹介しましょう。