学び合いの場を
つくり出すには

図 マルチスタイルメソッド 「レクチャー(Lecture)」「ワークショップ(Workshop)」「リフレクション(Reflection)」の三つのスタイルと、九つの学習法から成るマルチスタイルメソッド。実際の研修では、内容や参加者に応じて、三つのスタイルの順番(LWR型、WRL型、RLW型)やバランスを変化させて行う。
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 そうした研修を行う具体的な手法として堀氏が提唱しているのが、マルチスタイルメソッド(図)だ。従来行われてきた座学系の「レクチャー(講義)」に、「ワークショップ(協働)」「リフレクション(省察)」を組み合わせて、参加者の学び合いの場を形成するのである。

 少人数のグループに分かれて議論したり、与えられた課題に取り組んだりするワークショップは、最近多くの研修で取り入れられるようになってきている。もう一つのリフレクションは、自分自身の内面に向き合って考えや経験を概念化すると同時に、それを他者に伝えることで自己を再発見する活動といえる。

 このリフレクションで大きな役割を果たすのが「ファシリテーター」の存在だ。日本語では「支援者」「促進者」と訳されるが、知識や情報を一方的に伝えるインストラクター(講師)と異なり、参加者の意見を引き出し、気付きや相互理解を促すことで学び合いの場をつくり出す。会議やミーティングで内容を整理したり、認識の一致を確認するなど協働を促進させる立場としても注目されている。

「これまで座学系の研修だけだった企業・組織にとっては、いきなりマルチスタイルメソッドに移行するのは難しいかもしれませんが、ファシリテーターを活用して部分的にでも実践してみてほしい」と堀氏は話す。

日常から離れた
空間が有効

 効果的な研修を行う上で、もう一つ堀氏が指摘する留意点が「非日常性の確保」である。

「普段は、なんらかの成果を出すために仕事をしているわけですが、研修はその“成果”という視点をいったん脇に置いて、仕事のやり方や他者とのコミュニケーションなど、プロセスを振り返る場です。その内省を深めるためには、日常からはある程度離れた空間が有効なのです」

 しかし一方で、温泉地や避暑地などあまりに非日常性が高まると、参加者が開放され過ぎて逆効果になるとも指摘する。両者のバランスを取ることが大切だという。

 日本企業はもともと、教育研修にかける費用が欧米企業に比べて圧倒的に少なかった。それを補っていたのが、QC活動に代表されるOJTである。現場に高い教育機能があったのである。しかし、人員の削減や成果主義の台頭などでOJTが機能しなくなってきた現在、Off-JTとしての研修の重要性はますます高まっていると堀氏は語る。

「もちろん、個人の能力だけ高めても組織全体の力が向上するとは限りません。人材開発と組織開発を組み合わせて、より戦略性の高い研修を実践していただきたいと願っています」と堀氏は締めくくった。