橋の新設需要激減で再編が始まった橋梁業界。経済成長期に増築された橋の老朽化が始まり、大市場になるメンテナンス事業に期待が集まるが、課題は多い。この分野は技術力が不足し、日本の橋は危うい状態にある。このままでは橋を崩落させた米国の二の舞いもありうる。日本の橋梁メーカーと橋梁管理者が直面する課題、日本の橋が包含する危険性に迫った。 (取材・文/『週刊ダイヤモンド』編集部 鈴木 豪)

 今秋、橋梁業界で再編・統合による新体制が相次いで動き出した。

 10月1日、橋梁専業最大手の横河ブリッジは、鉄鋼大手の住友金属工業の橋梁部門と統合して、横河住金ブリッジを発足。11月1日には重工業大手のIHIと栗本鐵工所の橋梁部門と、松尾橋梁を統合した新会社が発足した。

 千葉県にある橋梁中堅ハルテックの工場を三菱重工鉄構エンジニアリングが借り受け、新たな生産体制も近々スタートする。「これらは序章で、再編はさらに活発化する」(IHIで橋梁事業を管掌する井元泉執行役員)という声が主流だ。

 再編は、日本の橋梁業界が抱える課題への対処策ではあるが、構造問題の解決策にはなりえない。

 どういうことか。まずは再編が起きる背景となった橋梁業界の歴史を振り返ってみよう。

日本の“橋”が危うい!

 上の図を見てほしい。高度成長期から列島改造ブーム、そしてバブル経済期に計画された長大橋の建設と、1990年代後半まで国内では高水準で安定的な橋梁新設需要があった。それがこの10年間は右肩下がり、市場は10年前の3分の1レベルに縮小した。

 衰退に拍車をかけたのが2005年、日本道路公団(当時)の副総裁を筆頭に、多数の逮捕者を出した業界ぐるみの大型談合の発覚だ。これを契機に道路公団の分割民営化は弾みをつけ、橋梁業界は“謹慎”状態となった。