残念な人、一流の人、その差は紙一重 ――あなたの成長を阻む「7つの壁」を打ち破り、人生を拓くための技法とは。 田坂流「成長の思想」をまとめた最新刊『なぜ、優秀な人ほど成長が止まるのか ― 何歳からでも人生を拓く7つの技法』より、本文の一部を紹介する。

仕事の速い「器用な人」ほど、実は危ない

「自分なりのやり方」という言葉の危うさ

今回は、私の失敗談から話を始めましょう。

大学時代、友人たちと、スキーを習っていたときのことです。
仲間のY君は、大学に入ってからスキーを覚え始めたため、スキー・コーチのアドバイスを素直に聴き、ストックの使い方、エッジの利かせ方、体重移動のタイミング、膝の使い方など、一つ一つ、基本を学んでいました。

一方、私は、中学校時代から、多少、スキーを経験していましたので、我流ではありましたが、それなりに斜面を滑れる状態でした。
また、高校時代にサッカーで鍛えた体力と運動神経があったので、急な斜面を滑るとき、斜面にコブがあっても、そのコブを体力と運動神経に任せて、多少体勢を崩しつつも、ポンポンと飛び越しながら滑っていました。
しかし、その私の滑り方を見ていた、ある年配のスキー・コーチが、私に、こうアドバイスをくれました。

「君は、スキーの基本をしっかりと覚えた方が良いよ。いまは、こうした軽い雪のコンディションだから、そうした滑り方でも、体力任せで何とか滑っていけるけれど、ひとたび重い新雪になったら、君の滑り方では、全く滑れなくなるだろう。いまのうちに、スキーの基本をしっかりと身につけた方が良いな」

そのコーチの言葉には、それなりの重さを感じながらも、当時の私には、「スキーが上手くなりたい」という強い思いも無かったので、その言葉を聞き流して、基本を身につけることなく、我流で滑っていました。
しかし、そのコーチの予見通り、数日後、雪が降り、ゲレンデが重い新雪になった途端に、上手く滑ることができなくなり、コブのところで転び続けることになりました。

一方、大学からスキーを始めたY君は、コーチに教わった基本をしっかり身につけたため、見事に上達し、2シーズンも経たないうちに、私よりも遥かに上手いスキーヤーになりました。

これは、私の若い頃の失敗談ですが、幸い、これはスキーの世界での話でした。
しかし、ビジネスの世界でも、こうした私の失敗と同じ壁に突き当たる人がいます。

それが、

「我流」に陥り、優れた人物から学べない

という「我流の壁」です。

そして、ビジネスの世界でも、それなりに優秀で、器用な人ほど、こうした壁に突き当たる傾向があります。