国内の総合重機メーカーでは最も積極的に海外展開を進める川崎重工業。組織再編を含めて、根底にある危機感と問題意識を聞いた。

川崎重工業社長 長谷川 聰<br />機器の単品販売ばかりでなく<br />システム全体で解決策を出すPhoto by Shinichi Yokoyama

──4月1日から、社内横断的な新組織「マーケティング本部」を立ち上げた。母体は2年前に発足した「インフラ市場戦略推進室」だが、以前からある営業推進本部と合わせて、今回あらためて再編した狙いはどこにあるのか。

 これまで当社では、個別の製品分野ごとに、顧客に密着して技術力を提供してきた。だが今後は、組織の壁を越え、過去に蓄積してきた技術やノウハウを組み合わせた技術開発力により、顧客のニーズに合った解決策を提案していく。そのような問題意識から、既存の組織を発展的に解消した。

 手垢の付いた名称かもしれないが、「当社が持っている製品を買ってください」ではなく、「顧客が必要とする製品を当社が開発して提供します」というように、根本からマインドを変える狙いがある。

──もとより川崎重工は、陸・海・空の輸送機器から、一般向け産業機器まで幅広い基盤技術を持つ。加えて、国内の総合重機メーカーの中では連結売上高に占める海外比率が約55%と高く、2020年度中には65%に引き上げるというビジョンを打ち出している。

 台頭する韓国や中国のメーカーとの競争で勝つためには、“模倣されにくい技術”をパッケージにして戦っていく必要がある。例えば、海外では、鉄道の車両と運行システムを組み合わせて販売する。同様に、現在注力しているエネルギー・環境分野においても、「分散型発電」を軸にして確固たるポジションを築きたい。とりわけ、1974年に自社開発した「ガスタービン」(電気と熱を供給するコージェネレーション型発電機)は、今では多種多様な気体・液体燃料に対応できる。