実績を積み重ね、周囲の評価も高い人材は抜擢され、彼らには経営陣にプレゼンテーションする機会も生まれるだろう。だが、実務能力とアイデアに恵まれた人材だからといって、幹部の心を動かすプレゼンができるとは限らない。そこでは素晴らしいアイデアだけでなく、経営判断に必要な情報を的確に提供する必要がある。筆者は、最高幹部へのプレゼンで陥りやすい4つの罠と、それを乗り越える方法を示す。

 ディヴィヤはフォーチュン50企業で大人数のエンジニアリングチームを率いるディレクターだ。先日、彼女はCEOとシニアエグゼクティブが参加する2日間のリトリート(研修合宿)に招待された。最高幹部チームと交流の場を持てることに、彼女も、彼女と同様に高い可能性を秘めた30人の仲間たちも、興奮した。

 このリトリートの目的は、将来有望なリーダーたちに、より広範な課題を認識させ、部門の垣根を超えてネットワークを拡大させ、そして言うまでもなく、最高幹部と個人的につながる機会を提供することにあった。

 セッションの始めに、参加者たちはいくつかの小チームに分かれた。チームごとに全社的な戦略課題に取り組むためだ。これはCEOの前で直接プレゼンする絶好の機会だった。

 ディヴィヤとチームメンバーたちは懸命に取り組んで、割り当てられたテーマを徹底的に調査し、具体的な課題をまとめ、さまざまなアイデアやソリューションについて議論した。夕食後にバーで過ごす代わりに、深夜遅くまで根を詰めてプレゼンを仕上げた。ディヴィヤがグループのスポークスパーソンに選ばれ、翌朝、チームを代表してプレゼンした。

 だがチームのアイデアは、手応えのないリアクションしか引き出せず、礼儀としての拍手を受けて終わりだった。熱意に欠ける反応に、当然ながらチーム全員が落胆した。

 ディヴィヤのチームは全員が賢明で、現在の職務で素晴らしい仕事をしており、前途有望なことは間違いなかった。では、何が悪かったのか。

 高い可能性を秘めたリーダーがプレゼンを行うのを何百回も見てきた私の経験から、インパクトの弱いプレゼンしかできないのは、ディヴィヤと彼女の同僚に限った話でないと明言できる。CEOにアイデアをプレゼンするときには、ベテランリーダーであっても、最高幹部と定期的に交流していなければ、よくある罠に陥る。ただし、それらの罠は容易に避けることが可能だ。