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5月15日 17時0分
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フェイスブック上場を前に〜米国経済の底力を考える〜 - 村上尚己「エコノミックレポート」

・今週18日(金)に、米国ナスダック市場では、米IT企業最大規模の新規公開となるフェイスブック上場が予定されている。それを前に、こうした企業による株式市場を通じた大規模な資金調達について、多少の解説を試みたい。なお筆者もフェイスブックを使うユーザーの一人だが、このサイトのユーザーが世界的に増えていることを報道から認識している程度である。ビジネスとしての潜在性、優位性、株価の行方、についての見識は、不勉強故余り持ち合わせていないがご容赦いただきたい。

・今回の上場に伴い最大135億ドル(1兆円超)のリスクマネーが、株式市場から調達されると報道されている。投資家の立場からすれば、上場企業(フェイスブック)の株主になる機会を得る直接のメリットがあるが、こうした大規模な新興企業による資金調達はどのような意味を持つのか?

・経済全体の観点から教科書的に説明すると、新規上場に伴う資金調達は、株式市場(金融市場)を通じて、リスクマネーが新たなビジネスモデルを持つ企業に供給されることを意味する。これは、資金仲介という金融市場が本源的に持つ重要な機能である。そして、生産性が高い企業・産業に、資金(=貯蓄)が供給されることで、経済活動にダイナミズムが加わり、それが長期的な人々の生活水準や生産性向上にも繋がる。

・米国において、新たな産業・企業が勃興した例として挙げられるのが、1990年代半ば以降の情報通信(IT)革命だろう。インターネット網など情報インフラ構築、高性能PC、画期的なインターフェース、それらを提供する企業が成長し、新たな投資・消費需要が創出され経済成長を押し上げた。それだけでなく、この技術進歩が、短期間のうちに米国一国の生産性上昇をもたらしたと議論された。実際に生産性が高まったかどうかは議論が別れるが、当時は、高成長と低インフレが並存した、稀にみる良好な経済環境だった(グラフ参照)。

・そして、当時の情報関連産業の盛り上がりにも、新たな付加価値を提供する企業が事業を広げる起爆剤として、株式市場を通じた資金調達、成長産業への資金供給が大きな役割を果した。そうした、株式市場の機能があったからこそ、当時の新興企業は、ビジネス規模を加速度的に広げることが可能になった。

・その後の2000年初頭のハイテク株の暴落や、エンロンスキャンダルなど、株式ブーム崩壊の負の部分もそれなりにあった。ただ、1990年代初頭までに成熟段階に入ったとされた米国において、株式市場のブームと高成長によって、新たな産業・ビジネスが生まれ、それにより人々の所得や生活水準が向上する、プラスの側面はかなり大きかった。

・時を経て、欧米の不動産バブル崩壊やリーマンショクなど金融システムなどの大混乱の後遺症をかかえながら、米国経済は今なお正常化の途上にある。米国は景気刺激のための金融緩和策などで依然支えられているが、こうした経済環境でも、米国では成長企業(産業)への資金供給という機能が健全に働いている。

・フェイスブックなどの最近のネット関連の新興企業の勃興が、1990年代半ばの情報通信ブームと同様米国経済全体のパフォーマンスに影響するかは、正直予想不可能である。ただ、少なくとも、今回の大規模な資金調達を伴う新興企業の上場は、米国経済が底力・健全性を保っていることを示しているとは言える。

・ところで、一般的に、外国へのキャッチアップのプロセスが終わった先進国においては、持続的な経済成長を実現するために、新たな付加価値を伴うモノやサービスの供給が不可欠で、企業による革新(イノベーション)の重要性が高まる。イノベーションが起きると、一国の産業構造は、従来存在しない産業が育つ過程で自然に変化する。そして、インターネットを通じた新たな情報提供や広告、SNSなどの産業が多く属するのは、「サービス産業」である。

・グラフは、1970年代後半からの米国の産業構造の変化を示している。所得水準が上昇するにつれ、モノを提供する製造業などのシェアが低下する一方、サービス業の産業シェアが高まっているのが分かる。そして、2010年時点で、民間産業のうち半分を、広義のサービス業(金融・不動産を含む)が占めている。消費のサービス化と、情報・ネットサービスの広がりに応じて、産業構造が変化していると言える。そして、グーグル(2004年上場)やフェイスブックなどが例だが、金融市場のリスクマネー供給機能が、こうした産業構造の変化を促しているといえる。

・参考までに、日本経済の産業構造の変化をみると、米国同様の先進国だけあって同様の傾向がみられる(グラフ参照)。ただ、サービス業の産業シェアは、米国ほど高まらず40%強である。もちろん、産業構造を決めるのは複数の要因があり、米国と日本が同じである必要はないし、単純に優劣はつけられない。日本にはイノベーティブな製造業が、米国よりも多いだろう。ただ、日本で、米国ほどサービス産業のシェアが高まらない一つの理由は、1990年以降の米国ほど、サービス関連の新規ビジネスが勃興せずに、金融市場を通じたリスク資金提供が限定的だったことかもしれない。

・日本のこうした状況については、様々な議論がある。デフレと低成長、資産デフレの長期化、それらをもたらしたマクロ安定化政策の機能不全の負の側面だと私は考えている。全体の名目成長率(=売上)が増える環境の方が、リスクをとって事業を起こすヒトも増えるし、リスクマネーの裾野も広がる。しかし、デフレという特殊な環境が長期化すれば、「現金」へのあくなき欲求が高まり、リスクマネー供給も抑制されるように思われる。

・いずれにせよ、2009年以降、金融危機の震源地だった米国の株価パフォーマンスが相対的に良く、2011年後半以降の世界経済底入れも米国が牽引している。こうした事実に加えて、今回のフェイスブック上場という大イベントは、米国経済の底力と持続的な成長に期待できることを示している。


(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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