2015年には347億円という2001年の株式上場以来、過去最大の赤字額を記録した日本マクドナルド。どん底の状況にあったマクドナルドを、マーケティング本部長(当時)として見事に再生させた立役者の一人が、11月21日に発売されたばかりの新刊マクドナルド、P&G、ヘンケルで学んだ「劇薬」の仕事術』の著者、足立光氏だ。P&Gからブーズアレン、ローランド・ベルガー、ヘンケル、ワールドとキャリアを作っていった伝説のマーケターの〈仕事の習慣〉とは。初回の今回は足立氏が本書を執筆した動機を紹介していきます。

日本マクドナルド
「347億の大赤字から奇跡のV字回復」の舞台裏。

「絶対にやめたほうがいい」
「その選択は今、ありえないだろう」

 2015年の夏、私が転職先として日本マクドナルドを考えている、と伝えると、決まってこんなリアクションが返ってきました。

 前年の2014年、品質問題に関する報道が広がり、日本マクドナルドに社会から厳しい目が向けられました。追い打ちをかけるように、2015年初頭、異物混入の報道が世の中に衝撃を与えます。

 2度の炎上で、日本マクドナルドの企業イメージは地に落ちていました。2015年1月の売上は、前年比約4割ダウン。とんでもない状況になってしまったのです。

 全国に約3000店舗、総従業員数は12万人。そして最盛期に年間5400億円規模の売上高を誇った日本マクドナルドは、2015年には売上が4000億円を切るまでに落ち込んでいました

 そんな状況の日本マクドナルドに、私は上席執行役員マーケティング本部長という、会社の実質的なナンバー3として入社しました。
 結果、私の入社3ヵ月目の2015年12月に久しぶりに売上高が前年比プラスに転じた後は、私が退職する2018年6月まで、31ヵ月連続で、前年超えの実績を作ることができました。

 もちろん私の運が良かったのもありますし、マクドナルドの再建は全社一丸となって取り組んだ結果であり、マーケティングがすべてではありません。ただ、日本マクドナルドがどんどん元気を取り戻していく中、いったいどうやってあの状況から再建を実現させたのか、問われる機会が増えてきました。
2018年夏、V字回復を遂げた日本マクドナルドを去ったのを機に、それをしたためるべく、機会を頂いたのが『圧倒的な成果を生み出す「劇薬」の仕事術』です。

 ひどい症状の会社を劇的に治すには、劇薬がいります。私は「劇薬」らしく、短期間で大きく急激に変えるため、自分が正しいと考えたことを、どんどん実行していきました。また、先へ先へと考えながら、いろんな施策を仕込んでいきました。
 ただ、日本マクドナルドの再建を語るには、私自身のそれまでの経験も語らなければなりません。私のこれまでのすべての経験が、日本マクドナルドでの決断や行動につながっているからです。

 本書『圧倒的な成果を生み出す「劇薬」の仕事術』では、私が何をしてきて、どんな意識を持ち、どんな判断をしてきて、日本マクドナルドをどう変えていったのかを、日本マクドナルドを含め、数々の「修羅場」で学んできた全てとともにまとめました。
 ぜひご一読ください。