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連載経済小説 東京崩壊
【第28回】 2012年5月18日
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高嶋哲夫 [作家]

タイムリミット

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第2章

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 1時間後、総理は総理執務室で村津と向き合って座っていた。

 秘書にもしばらくの間は2人で話すから、電話は取り次がず、入室時には必ずノックをして返事を待つように言ってある。

 2人はしばらくの間、お互い腹の探り合いのように無言で見つめ合っていた。

 「作業の進展はどうですかな」

 先に口を開いたのは総理の方だった。

 「チームが発足してまだ半月たっていません。進展などありません」

 「ゼロからの出発ではないはずです。あなたにとっては」

 「そうおっしゃいますと――」

 「前は首都機能移転準備室の室長を長く勤めておられる」

 「その組織は数年前に解散されました。私は全く別の組織と思っています」

 「しかし、いずれにしろ国交省という古巣に戻ったわけだ。以前の知識や経験までが消えたわけではないでしょう」

 「私だけです。戻ったのは。あとのメンバーはすべて若手で、一から勉強と調査をやり直しています」

 「前のメンバーは?」

 「海外勤務に出ている者、新しい部署で仕事をしている者、すでに退官している者、様々です」

 「なぜ彼らをメンバーに加えなかったのですか」

 「人事は私の及ばぬところです。しかし、彼らを呼び戻すというのは酷というものです。展望の見えない仕事を続けるというのは、志ある人を殺すに等しい。とくに優秀な若手にとっては。上司としてそれは出来ません」

 はっきりとものを言う男だ、と総理は思った。しかし、その通りだ。今までは──。

 

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高嶋哲夫 [作家]

1949年、岡山県玉野市生まれ。1969年、慶應義塾大学工学部に入学。1973年、同大学院修士課程へ。在学中、通産省(当時)の電子技術総合研究所で核融合研究を行う。1975年、同大学院修了。日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)研究員。1977年、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)へ留学。1981年、帰国。
1990年、『帰国』で第24回北日本文学賞、1994年、『メルトダウン』で第1回小説現代推理新人賞、1999年、『イントゥルーダー』で第16回サントリーミステリー大賞で大賞・読者賞など受賞多数。
日本推理作家協会、日本文芸家協会、日本文芸家クラブ会員。全国学習塾協同組合理事。原子力研究開発機構では外部広報委員長を務める。


連載経済小説 東京崩壊

この国に住み続ける限り、巨大地震は必ずくる。もし巨大地震が東京を襲ったら、首都機能は完全に麻痺し、政治と経済がストップ。その損失額は110兆円にもおよび、日本発の世界恐慌にまで至るかもしれない――。今後、日本が取るべき道は何か。その答えを探る連載経済小説。

「連載経済小説 東京崩壊」

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