「まず国民に広く告知しなければなりません。それが終わった段階で、国会での承認が必要です。そして新しい首都となる場所の決定。都市計画。建設。そして移転という順番で行なわれます。それぞれに議会と国民の承認、納得を得ていかなければなりません」
「私が聞いているのは手続きではない。時間だ」
「我々は最初、20年と考えていました。しかしそれはあまりにも長すぎる。その間には様々なことが起きるでしょう。頓挫する可能性もあります。さらに建設に携わる者の世代が変わってしまいます。最終的には15年で計画を立てました」
総理はふっと息を吐いた。そしてしばらく村津を見つめていた。
「10年、いや5年。それが無理ならば6年というのは難しいだろうか」
自分が関係できるのは、それが限度だろう。いやそれすらも難しい。しかし、石に食らいついてでもその期間は総理でいたい。
村津は無言のままだ。何と答えていいか分からないのか。あまりに短期間で考えたことすらなかったのだろう。
「すでに前の準備室で計画自体はまとまっていると聞いている。候補地の絞り込みも出来ている。その上での計画としたらどうなのか」
「すべての政治的条件が整えば無理な時間ではありません」
突然、村津の声が聞こえた。その声は総理の頭の中で、鐘の音のように響いた。
「そうか――」
総理の口からつぶやくような声が漏れた。
デスクの上の電話が鳴り始めた。総理は受話器を取るでもなく、村津を見つめている。
(つづく)
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